はじめに
解説記事を書こうと思ったのですが、今回はちょっと違う内容です。
またアメリカで痛ましい事件が起きてしまいました。13歳の少年が警官に射殺されてしまったそうです。
http://www.afpbb.com/articles/-/3101110
最初このニュースを知った時、やりすぎだろうと当然のように思ったのですが、日本語記事のへんなところに気がつきました。「BBガン」という表現です。
通常マスコミはおもちゃの銃のことをモデルガンまたはエアガンと呼びます。BBガンという耳慣れない表現を使ったのにはわけがあるはずです。少し調べてみました。
1. 英語の記事ではどう書かれているか
翻訳でおかしくなった可能性もあるので、まず英語のソースを探してみましょう。
https://www.yahoo.com/news/ohio-police-fatally-shoot-13-old-drew-bb-151134347.html
上記記事の英語版です。ここでもBBガンと書かれています。
通常、英語圏では、エアソフトガンはAirsoftと書くはずです。この時点で、私たちがよく知っているエアガンとは別物であると考えられます。では、BBガンとはいったい何でしょうか。
2. 発端となったBBガンは何か
記事にもあるように、BBガンとは「低性能のエアガン」です。調べた結果、少年が所持していたBBガンの情報がありました。
https://twitter.com/ColumbusPolice/status/776502381634850817
これは、UMAREXのXP40というモデルのようです。
https://www.midwayusa.com/product/246573/umarex-40xp-blow-back-air-pistol-177-caliber-bb-black-factory-reconditioned
日本円にして約5000円ちょっとの安いモデルです。
が、これで正体がわかりました。
3. BBガンとは何か
今回のモデルは4.5mmのBB弾をCO2で撃ち出すものです。先のページによると弾速は400fps、メートルにして約122m/sです。日本のエアソフトガンが0.2gの6mmBB弾で約98m/sが上限ですから、弾が小さくて軽いと考えると大したことはなさそうです。
しかし、実際はこのモデルは日本では完全に実銃として取り締まりの対象になります。さっきのモデルに対応した弾をウォルマートで探してみましょう。
https://www.walmart.com/c/kp/-177-bb-guns-pellets
leadとかsteelとか書いてあります。つまり、対応するBB弾とは、金属製の弾です。
要するに、「低性能のエアガン」とは、エアソフトガンのことではなくて、日本では実銃とされ、狩猟や競技に使われる、空気銃のことでした。
この弾はおよそ0.33gです。それほど重くないように思えますが、小さいので貫通力が高く、100m/sもあれば皮膚を簡単に貫き、骨を砕くくらいの威力があります。
とはいえ射程は短いので、警察が使う装薬銃(オートなら9mmか.40S&Wでしょう)に比べれば圧倒的に低性能ではあります。
しかし、アメリカではエアソフトガンはそれとわかるように、銃口または全体をオレンジにしなければなりません。しかしこのモデルはそういう規制対象外……つまり、「銃」として扱われてしまうものです。
静止を指示している警官に対してそれを取り出したことで、こんなことになってしまったわけです。
まとめ
今回の事件、少年が所持していたのがある程度の殺傷能力がある空気銃であること、警官の指示に従わずそれを取り出したことなど、一方的な見方はできないかなと思います。
とはいえ警官が少年を射殺したことは事実ですし、それに対する是非を問うことは私にはできません。
まずは何よりも、少年の冥福を祈り、類似の事件が起きないことを祈るほかありませんでした。