2016年9月30日金曜日

エアガンの紹介 - 東京マルイ 次世代電動ガン SOPMOD M4

はじめに


エアソフトライフルの中でも一二を争う人気を誇るモデルが、米軍が使用するM4A1カービンですが、ひとくちにM4と言ってもバリエーションが多岐にわたりすぎていて、どれを選んだらさっぱりわからない、ということはありがちです。
今回は、そのうちのひとつ、東京マルイの次世代電動ガン SOPMOD M4を紹介したいと思います。


1. M4カービン



米軍がベトナム戦争時に採用したM16ライフルは、50年以上に渡って改良を加えられながらいまだに使われ続けています。戦闘形態の変化に伴って、長大なフルサイズライフルよりも、取り回しの良いカービンがありがたがれるようになりましたが、米軍もそれにしたがい、M16ライフルの短縮バージョンである、M4カービンを採用しています。

M4カービン、あるいはM4A1カービンは、M16A4ライフルのバレル長を14.5inchとして、ストックを5ポジションの伸縮タイプにしたモデルです。バーストモデルがM4カービン、フルオートモデルがM4A1カービンですが、現在では主にM4A1カービンが使われています。

米軍が使っているだけあってエアガンでも特に人気があり、もちろん電動ガンでも何種類も発売されています。その中には、単純な射撃性能だけでなく、ギミックが盛り込まれたモデルもいくつか存在します。そのうちのひとつが、次世代電動ガン SOPMOD M4(次世代SOPMOD)(http://www.tokyo-marui.co.jp/products/electric/nextgeneration/201)です。


2. 次世代電動ガン SOPMOD M4


SOPMODとは"the Special Operations Peculiar MODification"の略で、特殊作戦用に回収が加えられた装備のことを意味します。具体的に特定のモデルを表すわけではないのですが、SOPMOD M4と言った場合、大抵はKnights ArmamentのRAS(Rail Adapter System)とLewis Machine & Tool CompanyのCraneストックを取り付けたものを指します。

次世代SOPMODもまさにそのような構成をしていて、アルミダイキャスト製のレシーバーにやはりアルミダイキャスト製のRASレプリカと、ABS製のCraneストックレプリカが取り付けられています。
スタンダード電動ガンのM4A1カービンとは異なり、レシーバーが金属製で比較的頑丈なのがポイントです。ただし、その分重量はありますので、サバゲ利用では不利かもしれません。

次世代電動ガンシリーズは、シュート&リコイルエンジンというギミックを搭載していて、ピストンの作動に連動して内部のウェイトを前後させて、疑似的な反動を再現する仕組みを持っています。実銃とは異なり前に向かうような反動ではありますが、それでもBB弾の発射と同時に銃が大きく振動するので、撃っていてとても楽しい銃です。

また、次世代SOPMODをはじめとする次世代M4シリーズには、マガジン内のBB弾を撃ち切ると自動的に作動が停止するオートストップシステムも搭載しています。再度撃つには、マガジンを交換してボルトキャッチを押す必要があります。ノーマルマガジン専用で多弾マガジンでは使えませんが、弾切れ時のリロードアクションが楽しめます。
この機構のため、スタンダード電動ガンのM4A1カービンとのマガジンの互換性はありません。

命中精度ですが、設計が新しいためか初速が比較的高いのと、チャンバーの性能がよいこともあって、東京マルイの電動ガンの中ではトップクラスの性能を誇ります。ただし、フルオート射撃時は振動で狙いがずれてしまうので、弾が散ってしまいます。これもロマンのひとつと思いましょう。

次世代SOPMODは、バッテリーとして専用のSOPMODバッテリーを使用します。これはニッケル水素バッテリーをコの字に組み立てたもので、ストック後部のバットプレートを外して差し込むだけの簡単取り付け仕様になっています。



扱いが非常に楽なのがメリットですが、ニッケル水素バッテリーであることと、構造上接点が多く、効率が悪いのが欠点です。通常の電動ガンは大抵1秒に約15発ほどのサイクルで発射しますが、次世代SOPMODは1秒に約13発ほどと、やや遅めのサイクルになっています。また、セミオートロックも発生しやすいのが難点です。
サードパーティからリチウムポリマーバッテリーを取り付けるためのアダプターも発売されているので、気になるようであればそちらを使用するのもよいでしょう。

次世代SOPMODは金属製のレシーバーを使っているので比較的頑丈な部類ですが、使い込むと振動でバッファーチューブがガタついてくるという持病を持ちます。現在のモデルは改良されてはいますが、それでも傷みやすいので、定期的にバッファーチューブとキャッスルナットが緩んでいないか、点検することをお勧めします。きちんと手入れをしてれば、取り返しがつかなくなるほど傷むことはなかなかありません。

次世代電動ガンシリーズは比較的価格が高めであることと、特許で守られているため海外製のコピー商品が存在できないこと(そんなことは当然だと思われるかもしれませんが、海外製のエアガンにはかなりの割合で日本製品のコピー商品が存在します)の2点から、海外製のカスタムパーツは比較的少なめです。

ただし、グリップ、ハンドガード等はスタンダード電動ガンのM4A1シリーズと完全な互換性があるので、外装パーツの交換で困るところといえばレシーバーとストックくらいでしょう。
ストックも交換したいのであれば、ノーマルのM4A1を再現した次世代電動ガン M4A1カービンも発売されているので、そちらを選ぶとよいでしょう。こちらはSOPMODバッテリーではなく、通常のバッテリーをハンドガード内に格納します。



次世代SOPMODは多少の欠点はありますが、性能が非常に高いので、おすすめできる電動ガンのひとつです。単純なBB弾の発射のみならず、射撃そのものの面白さも一緒に味わえる電動ガンとしては、随一のものだと思います。

2016年9月29日木曜日

エアガンの紹介 - 東京マルイ ハイキャパ 5.1

はじめに


ここまで長々と基本的な事柄について書いてきましたが、今後は時々エアガンの機種についての紹介をしていこうと思います。私が使ったことのあるものばかりになってしまうのはご勘弁ください。

最初は東京マルイのハイキャパ 5.1についてです。


1. ハイキャパ 5.1



ハイキャパ 5.1(http://www.tokyo-marui.co.jp/products/gas/blowback/55)はいわゆる「ハイキャップ 1911」と呼ばれるもののひとつです。デザインの細かい部分は東京マルイオリジナルですが、実銃のSTI 2011をモデルにしています。

2004年発売とやや古いモデルですが、実射性能が高く、マッチ等でもよく使われます。というより、箱出しの状態で相当当たるので、東京マルイ製品によくある「カスタムすると性能が悪化する銃」のひとつです。

通常のガバメントモデルと違って、マガジンがダブルカラム仕様なので、グリップが太いのが難点ですが、その分マガジンが大きく、連射しても性能が落ちにくいというメリットがあります。

STI 2011はグリップとシャーシが分割式になっていますが、ハイキャパ5.1もその例に漏れず、アルミダイキャスト製のシャーシとABS製のグリップでフレームが構成されています。シャーシが金属でフロント部分が重いので、強いリコイルでありながらフロントの跳ね上がりを抑えられるので、命中精度を高くできます。
銃そのものの使い方は通常のガバメントモデルと同じです。シングルアクションのコック&ロック仕様で、グリップセフティも付いています。

とにかくカスタムパーツが豊富で、サードパーティのパーツだけで一丁組めてしまうほどパーツが揃っています。パーツ交換はやや面倒な方です。最初はマグウェルとか、マガジンキャッチのように、本体を分解しないで取り付けられるパーツから入れていくといいかもしれません。

欠点としては、スライドストップノッチが欠けやすいことと、ディスコネクターの作動不良があります。前者はマルイも問題としたのか、同型のスライドを使用するウォーリアシリーズでは亜鉛ダイキャスト製のブローバックハウジングからアームを延長させて、スライドではなくそこにスライドストップをかけるようにして、スライドストップノッチが欠けないようにしています。

後者はマルイのガバメントモデルの持病で、使い込むうちにディスコネクターが上がらなくなってしまい、トリガーを引いてもハンマーが落ちなくなってしまう現象です。ディスコネクターは亜鉛ダイキャストにクロームメッキしたパーツなので、表面がデコボコしており、引っかかってしまうのが原因なので、ディスコネクターの干渉しているところを少し磨いてあげると解決します。それでダメなら、シアースプリングが劣化しているのが原因なので、新品に交換することをお勧めします。一時的な回避策としては、シアースプリングのディスコネクターを押し上げる部分を少しまげて、テンションを上げるのも有効です。


2.バリエーション


ハイキャパ 5.1にはいくつかのバリエーションモデルがあります。

まずは、スライド長を5.1inchから4.3inchにしたハイキャパ 4.3です。シャーシとスライドが同じ長さで、前面がフラットになっているので、ハイキャパ 5.1とはまた違ったスパルタンな印象があります。



ハイキャパ 4.3にはフルオート専用のモデルがあります。これがハイキャパエクストリームで、夏場に使うと猛烈な作動をしてくれます。ブローバックハウジング、ハンマー、シアー、ディスコネクターが専用品になっています。



ハイキャパ 5.1は作動性がよいので、純正でマッチ仕様のカスタムガンがあります。最初に発売されたのがハイキャパマッチカスタムで、肉抜きされたスライドによって高速な作動ができましたが、いかんせん肉抜きしすぎたのか破損が多く、すぐに生産終了してしまいました。


現在発売されているものがハイキャパゴールドマッチで、マッチカスタムのパーツ形状を調整した上で、金属パーツを金色にメッキしてあります。シャーシの形状が特徴的で、フロントが斜めに延長されているので、通常のハイキャパとはまた違った味わいがあります。



また、ガスブローバックガンには珍しく、子供向けのローパワーモデル、ハイキャパ 5.1Rがあります。青少年育成条例で定められた0.135J以下というパワーをクリアした、14歳以上用のモデルです。本来このパワーならば10歳以上用になるところですが、スライドが激しく動くことから、14歳以上用としたようです。




パワーが低い以外は完全に通常のハイキャパ 5.1と同じで、インナーバレルアセンブリを除いてカスタムパーツの互換性もあります。

その他、ハイキャパのスライドは東京マルイのガバメントモデルと互換性があるため、組み替えが可能です。ウォーリアシリーズはハイキャパ 4.3のスライドをほぼそのまま使っています。

2016年9月28日水曜日

光学照準器の保護

はじめに


スコープやドットサイト等を使って実際の戦闘をする場合と、サバゲーをする場合とで、ひとつ大きく違う点があります。当たり前のことですが、サバゲーでは当たっても死なない、という点です(きちんと目を保護して、法律を守った銃を使った上でのことですが)。
例えば、スコープを構えた状態で、スコープの対物レンズに弾が直撃したとしましょう。これが実弾だった場合、恐らく弾丸はそのまま頭に飛び込んで、撃たれた人は死んでしまうでしょう。
一方、エアガンの場合はそのような状況に陥っても命に影響はありません。しかし、BB弾とはいえ弾が対物レンズに直撃してしまうと、よくて傷、悪ければレンズが割れてしまいます。つまり、実銃の場合とは違って(実弾だったらどうせ死んでしまうので、スコープひとつ守ったところでなんの意味もありません)、サバゲーではスコープをどう保護するか、ということを考える必要があります。


1. ポリカーボネート板による保護


一番オーソドックスな方法がこれです。最低1mm、できれば2mmくらいのポリカーボネート板を対物レンズの前に配置して、BB弾の直撃からレンズを守ります。

ドットサイトの場合は、エアガンのカスタムパーツメーカーから専用部品が出ていることがあります。それをはめ込むだけなので、取り付けは非常に簡単です。



一方、スコープで専用部品が出ていることはまれなので、ポリカーボネート板を自分で切り出すか、あらかじめ対物レンズのサイズに合わせて丸く切り出された板を購入することになります。専用品ではないので固定方法を考える必要がありますが、一番簡単な方法は、フリップアップ式の対物レンズキャップを使用して、スコープとキャップの間に挟み込むことです。
ACOGのような特殊な形状で対物レンズキャップが使えない場合は、圧入するなどの面倒な手順を使わなければならないのが難点です。


2. キルフラッシュによる保護


モデルによっては、キルフラッシュという専用部品が存在することがあります。これは比較的頑丈なメッシュでできたカバーで、対物レンズに反射する光を抑え、標的に気づかれにくくするためのものです。




対物レンズをすっぽり覆うので、BB弾の直撃からレンズを守ることができます。ポリカーボネート板よりはやや弱いこと、対物レンズ前にメッシュを配置するので像が暗くなってしまうことが難点ですが、大抵は専用部品なので取り付けが簡単なのがメリットです。メーカーによっては、光学機器を買った時に標準で付属していることもあります。
ACOGには専用のキルフラッシュが存在するので、それを使うとよいでしょう。


まとめ


光学照準器の対物レンズは結構頑丈なので、半端な距離からの直撃ならあまり割れたりはしないのですが、それでも気分的にいいものではないので、保護することをおすすめします。

個人的なおすすめはポリカーボネート板です。特にスコープの場合は、フリップアップキャップにはめ込むだけで十分な強度を保ってくれますし、傷が入った場合は作り直せばいいのでコストも非常に安く済みます。

特殊な形状のスコープや、ドットサイトの場合は、専用部品を購入しなければなりませんが、せっかくの光学照準器を壊さないように、サバゲーに投入する際にはなるべく保護しておいた方がいいでしょう。

2016年9月27日火曜日

スコープのゼロイン

はじめに


パララックスの話をしてしまったので、ゼロインの話もしておきましょう。というより、本来はこちらが先でした。すみません。

1. ゼロインとは


いくらスコープがあるとはいえ、ただ覗いて撃つだけで狙ったところに飛んでいくほど甘くはありません。当然ながら、弾道とスコープのレティクルが一致するように調整する必要があります。これをゼロインと呼びます。
もちろん、ドットサイトやホロサイトの場合も同じです。

2. ゼロインの方法


ゼロインの方法について、順を追って説明しましょう。

(1) 銃を固定する


まず、銃をきちんと固定しましょう。立ったまま銃を構えて撃っても、撃つたびに動いてしまうため、正確なゼロインを行うことはできません。
欲を言えばライフルレストやサドルと三脚を使用してしっかり固定することがよいのですが、なければバイポッドや、それも無ければバックパック等に載せて、動かないようにしておきましょう。
できればこの時点で銃の水平が取れているとベストです。

(2) スコープを固定する


銃がしっかり固定されていても、その上に載っているスコープがグラグラでは元も子もありません。こちらもしっかりと銃に取り付けておきましょう。
実はここで問題になるのがスコープマウントの精度です。良いスコープを使っていても、スコープマウントが安物のレプリカでは、きちんと狙うことはできません。できれば実銃対応のスコープマウントを使うことをおすすめします。

(3) 標的までの距離を設定する


ゼロインはある特定の距離に対して行うものなので、狙って当てたい距離に標的を配置します。一斗缶や段ボール箱などでいいでしょう。
サバゲーの場合は40~50m、標的射撃の場合はその距離に合わせて配置してください。
なおこの時、銃と標的の高さが同じになるようにしてください。高さに差があると、銃を傾けて撃たなければならなくなるため、正確なゼロインはできなくなります。

(4) ホップを調整する


標的にきちんと届くようにホップを調整します。撃ちながらやってもかまいません。

(5) 左右を調整する


射撃を行い、弾がレティクルのどちら側に飛んで行ったかを確認します。
もし弾道がレティクルの中心より左側にあった場合、レティクルのウィンデージノブを"R"方向に回します。右側にあった場合は"L"です。「ウィンデージノブを回すと、弾道が動く」と覚えれば直観的です。
この段階では上下の調整はしていないので、左右だけを気にしてください。
なお、射撃を行う場合は、銃が完全に水平になっていることに注意してください。特に、左右の傾きは厳禁です。ホップの影響で、弾が斜めに飛んで行ってしまいます。

(6) 上下を調整する


今度は上下を調整します。弾道がレティクルの中心より上側にあった場合は、レティクルのエレベーションノブを"DOWN"側に、下側にあった場合は"UP"側に回します。

(7) 違う距離で撃ってみる


サバゲーの場合は異なる距離での射撃もありうるので、少し標的を近づけて撃ってみるといいでしょう。この時、あまりにも着弾点がずれるようなら、正常にゼロインができていないか、ホップ弾道が山なりになりすぎています。ゼロインがずれている場合はともかく、ホップ弾道に関しては慣れるしかありません。

まとめ


実のところ、狙ったところにそれなりに当てられれば、エアガンに関してはゼロインは適当でも大丈夫です。というのは、エアガンの精度はそれほど高くなく、「BB弾が0.005g軽かった」「チャンバーに少し油が付いていた」「銃が傾いていた」「たまたまちょっと風が吹いた」といった、ほんの些細な現象で、30m先の着弾点が大幅に変わってしまうためです。私もいつも適当です。
とはいえ、全く調整しないままではなんの意味もありませんし、やり方がわからないままでは調整のしようもないので、基本のやり方をご紹介しておきました。せっかくのスコープですし、きちんと調整して、バシバシ当てられるようにしてみてはどうでしょうか。



2016年9月26日月曜日

スコープのパララックス

はじめに


「アイボックスの広いスコープは適当に覗いても標的が見える」という話をすでにしたかと思います。しかし、スコープは見えればいいというものではなく、レティクルで狙ったところに弾丸を送り込むことができなければ意味がありません。この時に重要になるのが、パララックス(視差)という概念です。

1. パララックスとは


スコープのレティクルは当然上下左右に調整ができるのですが、場合によっては覗き込む位置によって、レティクルの位置が変化してしまうことがあります。これをパララックスと呼びます。

例えば、30m先の標的にレティクルをきちんと合わせたとします。この状態でとっさに構えて、たまたま目がスコープをまっすぐ覗きこまずに、少しずれてしまった時、もしこのスコープがパララックスの影響を受けていると、レティクルに標的をぴたりと合わせたとしても、標的には当たりません。なぜなら、覗き込む位置がずれたことで、レティクルが指す場所がずれてしまっているからです。
これでは、いくらアイボックスの広いスコープを使っていても、狙ったところに当たらなくなってしまいます。

パララックスは標的までの距離に依存しています。100mでパララックスが無くなる(パララックスフリーと呼びます)ように設定されているスコープで、50m先の標的を狙うと、パララックスが発生します。この影響をなくすためには、パララックスを調整する必要があります。

2. パララックスの調整


スコープによっては、パララックスの調整ができるものとできないものがあります。パララックスの調整ができないスコープでは、あらかじめ設計された距離以外ではパララックスの影響をなくすことはできません。
一方、現在主流のスコープは大抵パララックスの調整が可能です。通常はフォーカスの調整と一体となっていて、レティクルと標的のピントがきちんと合っていれば、パララックスの影響を受けない状態であるといえます。

ただ、パララックスの調整範囲には上限があります。スマホのカメラで手元の小さいものを撮影する時、何度やってもオートフォーカスでピントが合わない、という現象を見たことがあるかと思いますが、それと同じで、ある程度近いとフォーカス調整機構ではピントを合わせきれなくなるのです。

これはエアガンにとっては大きな問題です。というのは、エアガンは実銃に比べてはるかに射程が短いので、パララックスの影響を受けない距離をより短くしなければならず、つまり通常よりも近距離の標的にピントを合わせなければいけない、ということになるからです。
この最低距離は、きちんとしたメーカーでは仕様として公開しています。完全に影響を取り切れないとしても、できるかぎりパララックスフリーの距離が短いものを選んだ方がよいでしょう。

2016年9月25日日曜日

スコープの明るさと解像度

はじめに


スコープはドットサイトに比べて価格差が激しく、1万円程度の安価なものから、100万円もする超高級なものまであります。一見して差はなさそうに感じますが、一体何が違うのでしょうか。

1. 明るさ


スコープは複数枚のレンズを使用して像を拡大します。つまり、外側から入った光は、必ず複数枚のレンズを通って、目に見えるわけです。
レンズの透過率が95%の場合、レンズ1枚を通すと、像は5%暗くなります。これだけならほとんどわかりませんが、もし8枚のレンズを使ったライフルスコープがあったとして、そのレンズの透過率が95%だと、最終的に目に見える像は95%の8乗なので、本来の66%まで明るさが低下してしまいます。

安価なスコープと高級なスコープの第一の違いはこの点です。高級品は非常に高い透過率のレンズを使用しているため、肉眼とほぼ変わらない明るさを持っています。そのため、薄曇りや雨天、夕方等、やや暗い状況でも、標的をはっきり見ることができます。

2. 解像度


解像度と言っても、液晶を使っているわけではないので、ドットの数が違うとかいうわけではありません。

レンズは工業製品なので、必ず製造公差というものが存在します。レンズの製造公差とは、すなわち歪みになります。レンズが歪んでいると、入ってきた像も歪んでしまうため、複数のレンズを通すうちに焦点にズレが生じてしまい、ぼやけた像になってしまいます。
また、組み立ての段階でレンズの中心が完璧に一致していなければ、どれだけよいレンズを使っていても、最終的な像はぼやけてしまいます。

これが第二の違いです。レンズそのものの精度と組み立ての精度が高いため、安価なものと高級品では、明らかに像の細かさが違います。これは高倍率時に特に顕著で、ある程度離れた距離に隠れたものを探す時に威力を発揮します。

まとめ


実のところ、スコープは「性能のよいものは高い」というのを地で行く製品です。軍における長距離狙撃や、ロングレンジ射撃競技に使われるスコープが、ことごとく数千ドル以上もする高級品なのは、これが理由です。

とはいえ、エアガンでは高々数十mの射程距離しかありませんし、わざわざ薄暗いところで射撃する必要もあまりないので、光学性能そのものが射撃精度にどこまで影響するかは、ほとんど微々たるものでしょう。むしろ、前回紹介したアイボックスのように、覗きやすさを重視して選択した方がよいかもしれません。

2016年9月24日土曜日

スコープのアイリリーフとアイボックス

はじめに


スコープは複数のレンズを使った複雑な光学機器のため、素通しの筒を覗くのとは使い方が全く違います。このあたりはカタログスペックには載らない性能のわりに、使い勝手に大きく影響するので、購入する前にきちんと理解しておきましょう。

1. アイリリーフ


レンズの付いていないただの筒をまっすぐ覗いた時、中心には向こう側が見えますが、その周囲には筒の内壁が見えるはずです。
スコープを使った時、接眼レンズ一杯に向こう側の状況が見える状態ではなく、一部に内壁が映ってしまっている状態を、「ケラレている」と言います。これは、スコープだけではなく、一眼レフカメラ等にもある現象で、他機種用のレンズをアダプターで装着すると、組み合わせによっては起きる現象です。

ケラレている状態だと、せっかくのスコープの視野の一部が欠けてしまうことになり、非常に見づらい状態になります。
ケラレないようにするには、接眼レンズと目の間を、スコープによって決められた一定の距離にする必要があります。これをアイリリーフと呼びます。

アイリリーフは、その設定された長さによってストックの長さから構え方まで決まってしまうので、非常に重要です。

例えば、米軍が使用している固定倍率のプリズムスコープであるACOG TA31は、アイリリーフが非常に短いことで有名です。M16A4に載っている写真をよく見かけますが、M16A4は長めの固定ストックですし、そこにさらにボディーアーマーを着込んだ状態で普通に構えると、スコープと射手の頭の距離がアイリリーフよりも遠くなってしまうため、肩にストックを載せたような構え方をしていたりします。TA31はコンパクトでいいのですが、M16A4にはどうにも使いづらいように感じてしまいます。

アイリリーフは大抵の場合スコープの仕様としてカタログに載っているので、調べてみるといいでしょう。

2. アイボックス


個人的にはアイリリーフよりも重要であるように感じるのが、このアイボックスです。
アイリリーフは接眼レンズから目までの距離という1次元の値ですが、アイボックスはそれを3次元空間に広げた概念です。

アイリリーフが適正な距離であっても、頭の位置が少し上下左右にずれていると、やはりケラレてしまうことがあります。アイボックスの広いスコープは、このような状況でもケラレにくく、とっさに構えた時でも正しく標的を見ることができます。

このデータはカタログにはまず載っていないので、評判を調べるしかありません。
例えば、TrijiconのAccuPointシリーズは比較的アイボックスが広く、狙いやすいスコープと言えます。TrijiconはACOGのようにコンパクトで接近戦でも使うようなスコープを多く製造しているので、解像度や倍率の高さよりも狙いやすさを重視しているようです。

一方、ディオン光学技研のMarchシリーズはアイボックスが狭いとよく言われています。Marchシリーズはどちらかというと精密射撃や狙撃に使われるものなので、コンパクトかつ高倍率で、解像度も高いことを重視して、アイボックスの広さとトレードオフの設計にしているようです。実際、光学性能自体は価格帯が一回りか二回り上の製品に匹敵します。

エアガン用では、ノーベルアームズのスコープはかなりアイボックスが狭いため、とっさの射撃にはあまり向いていません。価格帯の割に光学性能はよいので、やはりトレードオフになってしまっているようです。

なお、倍率の高いスコープほどアイボックスが狭くなる傾向があります。高倍率のスコープの場合、じっくり狙って撃つことが多いので、アイボックスが狭くても特に大きな問題にはならないのだと思います。

アイボックスは精密射撃の時はそれほど気にしなくてもよいですが、サバゲーでアサルトライフルに載せる場合には重要視した方がいい要素です。
先に述べた通り、カタログには載っていないので、欲しいスコープがあれば店頭で見せてもらうなどして、使い心地を確かめた方がいいでしょう。

2016年9月23日金曜日

照準器について(スコープ編)

つづきから


さて、光学照準器の花形といえばやはりスコープでしょう。
スコープは構造がドットサイトやホロサイトとは大きく異なり、要素が多いので、概要にとどめて、詳細は後で何回かに分けるかもしれません。

3. スコープ


身もふたもないことを言ってしまえば、スコープは照準(レティクル)の付いた望遠鏡と言ってもいいでしょう。実際、構造はほぼ望遠鏡と同じです。

スコープには、倍率が固定のものと、可変のものがあります。固定倍率のものには、通常の長いスコープの他、Trijicon ACOGのような、プリズムを使用した小型のものもあります。一方、可変倍率のものは、特定の倍率域を連続的に変化させられるものがほとんどですが、ELCAN SPECTOR DRのような、レンズを物理的に切り替えて2種類の倍率を選べるものもあります。
どちらも最低1倍から、特に高倍率なものになると50倍程度まで存在します。

ドットサイトやホロサイトは、銃に取り付ける部品(マウント)が一体型か、分離型でも純正品が付属しているものがほとんどですが、スコープの場合は通常は別売りのマウントリングが必要です。銃側のマウントベースの形状に合わせていくつかの種類があります。現代の西側の銃では、マウントベースはピカティニーレールが主流で、レールの溝にマウントリングの軸をかみ合わせ、挟み込むように締め付けて使うものがほとんどです。
一方、AK-47やG3のような古い銃では専用のマウントが必要になりますが、ピカティニーレールに変換するアダプターも存在します。

スコープのマウントリングは、スコープの筒の寸法に合わせて選択します。一般的なものは30mmで、古いモデルや廉価なモデルでは1inchのものが主流です。最高級のものになると、34mmや35mmといった太いモデルもあります。これは、筒が太い方がより大きなレンズを使用でき、明るく解像度の高い像を得られるためです。

スコープのレティクルは実は単純な十字ではなく、測距計の役割を果たします。通常は十字にドットが刻んであり、ミルドットレティクルと呼ばれるものの場合、固定倍率なら常に、可変倍率なら特定の倍率で、この間隔(1mil)が1000m先の1mの幅に一致するようになっています。もし、180cm(1.8m)の人物が5milだった場合、距離は180÷5×10で360mとなります。これのヤード・ポンドバージョンがMOAレティクルです。
また、近距離用のスコープでは、とっさの際に狙いやすいようにドットサイトのようなレティクルを持つものもあります。他にも、両方の特徴を備えたレティクルが様々に開発されています。例えばこんな(http://www.vortexoptics.com/discontinued/vortex-razor-hd-1-4x24-riflescope-with-ebr-556-reticle/reticle)変な形のものもあります。

とはいえ、エアガンの射程距離では実際はほとんど関係ありません。実銃の弾道特性に合わせて設計されたレティクルの場合、距離に応じて狙う位置を上下させられるようにガイドがついていますが、弾道が全く違うため、役に立ちません。
長距離を狙うならミルドットレティクル、近距離用ならドットまたはサークルレティクルのスコープが使いやすいと思います。

ちなみに、倍率を変更できるスコープの場合、倍率変更時にレティクルの寸法が変化するものとしないものがあります。変化するものをファーストフォーカルプレーン、変化しないものをセカンドフォーカルプレーンと呼びます。どちらかといえばファーストフォーカルプレーンの方が新しい製品ですが、このあたりは好みで選べばよいでしょう。

スコープの性能や選び方については、次回以降まとめていきたいと思います。


2016年9月22日木曜日

照準器について(ホロサイト編)

つづきから


前回は等倍の光学照準器であるドットサイトについて紹介しましたが、構造の違う等倍の光学照準器がもう一つあります。

2. ホロサイト


ホロサイトは基本的にはドットサイトと同じように使いますが、ドットサイトのドットに相当するレティクルの投影方法が少々違います。

ホロサイトは、ホログラフィ技術を使用して、レンズにレーザーでレティクルを投影するため、ドットサイトに比べてレンズがシンプルなので、レンズに破損があってもレティクルを映し出すことができます。ホログラフィなので、レティクルを特殊な形状にすることが可能なのも特徴です。
また、レンズが大きいため、非常に視野が広く、ドットサイトによくある筒を覗いているような感覚がありません。

米軍ではEotechの553及び557を採用しているので、これらが搭載されたM4A1カービンの写真を数多く見ることができます。ちなみに、

ただし、少し欠点があります。レンズが若干脆く、BB弾の直撃でも簡単に割れてしまうことと、レティクルが無限遠に投影されるため、視力が低かったり、乱視が入っていたりすると、にじんでしまって見づらい点です。
前者はポリカーボネート製のレンズカバーが市販されているので、極力それを使うようにしましょう。もちろん、ホロサイトに限った話でもなく、普通のドットサイトでも至近距離から直撃するとレンズが割れてしまうことがあるので、保護するに越したことはありません。
後者については、倍率を後付けで付けることのできるマグニファイアを併用すると解決できますが、倍率が等倍ではなく約3倍になってしまうのがネックです。

この製品もレプリカがありますが、構造が全く違い、レプリカは単なるドットサイトになっています。そのため、実際の見え方をレプリカで試すことはできません。先に述べたように、視力に依存して見え方が大きく変わるので、もし欲しい場合は、購入前に一度本物を覗いてみることをおすすめします。

さらにつづきます


等倍の光学照準器の場合、近距離はいいのですが、遠方の標的に当てるのは結構苦痛です。実際のところ、エアガンでは20mも離れると、サバゲーで人に当てるならともかくとしても、10cmの的に当てるには倍率のある光学照準器が必要になってきます。
そんな時に使用するのが、スコープです。次回以降、スコープについて詳しく紹介していこうと思います。

2016年9月21日水曜日

照準器について(ドットサイト編)

つづきから


アイアンサイトの欠点として、狙う姿勢が限られることと、倍率が無いことが挙げられます。
これらは光学照準器で解決できます。まずはドットサイトから紹介します。

2.ドットサイト


ドットサイトはプリズムを使用した照準器で、透明なスクリーンに投影された点(ドット)を標的と重ねることで照準できるものです。通常、倍率がないものをドットサイトと呼びます。人によってはダットサイトと呼ぶこともあります。

ドットサイトの最大の利点は、ドットを重ねるだけという照準の簡単さです。アイアンサイトの場合、リアサイトとフロントサイトと標的を重ねる必要がありましたが、ドットサイトはドットと標的だけなので、姿勢を選びません。そのため、短距離での迅速なサイティングに非常に向いています。

有名なところでは、AimpointのCOMPシリーズやT1/T2シリーズ、TrijiconのReflexシリーズ等が挙げられます。これらはいわゆる実物光学機器と呼ばれるもので、実銃用なので、エアガン用としてはオーバースペックではあるものの、工学系が非常に明るく見やすいのが特徴です。また、当然ながら頑丈に作られているので、そう簡単には壊れません。

一方、安価に売られている製品には、これらのレプリカ…悪く言えば偽物が存在します。形状はおろか刻印まで完全にコピーしたこれらの製品は、日本においては模型用のレプリカとして流通していますが、アメリカでは完全にコピー商品として扱われており、実際摘発もされています。安いことは安いのですが、いかんせん作りが適当で、非常に壊れやすいので、あまりおすすめできる代物ではありません。

私がおすすめするのは、実銃用の安価な製品です。例えば、SIGHTRONのSD-30は同社MD-33の廉価版で、自衛隊に採用されていたMD-33譲りの工学系と頑丈さを誇りつつ、2万円以下の価格で購入できます。
他にも、HOLOSUNのドットサイトは、Aimpoint T1の形状に近いコンパクトさと、安価ながら高性能であることから、最近アメリカで人気の高い製品です。こちらは3万円ほどで購入できます。

実のところAimpointやTrijiconの製品は軍用を意識しているので、実銃用としてもオーバースペックなところがあり、ミリタリー装備にこだわらなければもっと安価で十分使える製品はいくらでもあります。逆に言うと、ミリタリーを再現するには非常に高価な製品を買わなければならないのですが……これはアメリカでも事情は同じようです。

この他、トイガン用にきちんと作られた製品もあります。ノーベルアームズのCOMBAT T1はAimpoint T1を模したエアガン用の製品ですが、実銃のような強烈な反動は当然エアガンにはないので、必要十分な強度を持っています。これは2万円以下で購入できます。

なお、上記に挙げた製品はどれもチューブ型のドットサイトですが、ドットを投影する部分が露出した製品もあります。これをオープンドットサイトと呼び、軽量であることから、競技用に使われています。若干強度に劣るので、軍用で使われることはほぼありません。
C-MOREはこのタイプを製品を多く発売しています。

また、最近はオートマチックピストルのスライドの上や、ライフルスコープの上に載せられるような、小さなドットサイトもあります。Doctorのマイクロドットサイトや、Trijicon RMR、Insight MRDS等が有名です。
ピストルのスライド上に載せる場合、耐久性は特に重要です。レプリカは1回作動させるだけで壊れることがあります(実話です)。ですので、できれば実物を購入することをお勧めしますが、いかんせんかなり高価なものばかりなのがネックです。また、取り付けるベースのネジ穴の位置がそれぞれ異なるので、対応したモデルを購入する必要があるのも、なかなか敷居の高いところです。

つづきます


等倍の光学照準器には他にも種類があります。次回はそれを紹介しようと思います。


2016年9月20日火曜日

照準器について(アイアンサイト編)

はじめに


銃を使う時、もちろん標的に当たるように狙う必要があるわけですが、これは当然エアガンでも同じです。狙うために使う装置を照準器、サイトと呼びますが、これにもいくつか種類があります。


1. アイアンサイトとは


ほとんどの銃に標準で装備されているものがアイアンサイトです。その名の通り金属製のものが多いですが、樹脂でできているものもあります。

アイアンサイトは通常、前方と後方の2つの部品からなります。後方に取り付けられているリアサイトの溝に、前方に取り付けられているフロントサイトがぴたりと合って見えるようにして狙います。このタイプをオープンサイトと呼びます。オープンサイトは主にハンドガンに使われます。

溝ではなく小さな穴になっているタイプもあります。これをピープサイトと呼び、ピープサイトの穴の大きいものをゴーストリングサイトと呼びます。ピープサイトはアサルトライフル等に、ゴーストリングサイトはショットガンに使われることが多いです。
また、ピープサイトを細かく微調整できるようになった高精度のものもあります。これは競技用ライフルに使われ、マイクロサイトと呼びます。

アイアンサイトは照準の位置を調整可能なもの(アジャスタブルサイト)と、固定となっていて調整できないもの(フィックスドサイト)があります。ハンドガン用はそれほど長距離の射撃を行わないことと、荒い扱いでも壊れないことを目的として、フィックスドサイトが主流です。もちろん調整できるタイプもありますが、どちらかといえばマッチ用の銃に使われているケースがほとんどです。

一方、ロングガンのアイアンサイトは調整可能になっていることがほとんどです。これは、ある程度の距離を保った状態で射撃することが多く、サイトがずれていると明後日の方向に飛んでしまうためです。

ただ、古いサブマシンガンには簡易的なサイトしか付いていないことがあります。昔はサブマシンガンは弾をばらまくためのものという扱いだったので、適当なサイトでも何発かフルオートで撃って当たれば十分、とされていたためです。この発想をひっくり返したのがMP5で、本格的なアジャスタブルサイトを備え、短距離であれば狙撃も可能でした。

話がずれたのでもとに戻しましょう。
ロングガンの場合、光学照準器を使用するケースも多く、アイアンサイトは光学照準器の故障時にくらいしか使わないことになります。このようなアイアンサイトを、BUIS(Back-up Iron Sight)と呼びます。
光学照準器を使う場合、大きなアイアンサイトが付いていると非常に邪魔です。そのため、BUISには折り畳み可能なフォールディングサイトが用意されています。MAGPULのMBUSシリーズや、Knights ArmamentのBUISがメジャーなところですが、その他にも様々な企業が製品をリリースしています。

アイアンサイトを使って狙う場合は、リアサイトとフロントサイトを一直線に並べなければなりません。そのため、不安定な姿勢では狙いづらいという問題があります。また、当然ながら倍率がないため、遠方の標的に弾を送り込むのは、かなり難易度が高くなってしまいます。
そのような用途に対応するために、光学照準器を載せることがあります。
次回以降、光学照準器について書いていこうと思います。というわけで、つづきます。

2016年9月19日月曜日

ホップアップシステム

今回は一気に解説します


BB弾を飛ばす時、当然ながら強力な圧力をかければ遠くまで届きます。昔は実際こうやって、発射エネルギーだけで相当な距離を飛ばしていたようですが、現在ではパワー規制があるため、単純に発射しただけではほとんど飛びません。
しかし、普通の電動ガンでも、今の製品は50m近く飛ぶようになっています。このために存在するのが、ホップアップシステムです。

ホップアップシステムは、BB弾にバックスピンをかけることでマグヌス効果による揚力を与えて、遠くまで飛ぶようにする仕組みです。精度よく設計・組み立てられたホップアップシステムで回転力を与えられたBB弾は、低速ながら伸びるような弾道でスーッと飛んでいきます。特に、パワーの低い10歳以上用のエアガンを撃つと、この様子がはっきりとわかります。

通常、エアガンではチャンバー内にラバーの突起を出しておき、発射時にBB弾がその突起に触れることで、バックスピン(ホップ)をかけています。ホップが弱すぎると射程が短くなってしまいますし、強すぎると弾速が低下した頃に前進速度と揚力のバランスが崩れて、天高く舞い上がってしまいます。
好みもありますが、30m付近で少し浮き上がってから落ちるような弾道にすると、サバゲーでは使いやすい気がします。

ホップのかかり具合は、BB弾の重量、大きさ、表面の具合によって変わってきます。そのため、突起の出方を調節することでバックスピンの回転数を変化させて、適切なホップに変更できる可変ホップアップシステムを搭載したエアガンが主流です。
ただし、可変ホップアップシステムは調整がシビアだったり、構造上可変の仕組みを入れられなかったり等の理由で、固定ホップアップシステムを採用しているエアガンも数多くあります。このような場合は、BB弾の選択によって調整します。固定ホップアップエアガンのチャンバー上部に穴をあけて、イモネジをねじ込むことで調整できるようなカスタムをする人もいます。

ホップをかけると、通常は弾速が少し下がります。しかし、バレルが短く初速を稼ぐためにスプリングを強くする機種では、ホップをかけると弾速が上がる傾向があります。これは、チャンバーからBB弾が動き出す前に強いスプリングで一気に空気を圧縮するので、ホップをかけるほど内圧が高くなるためです。この間のバランスをうまくとると、ホップをかけても初速の変わらないエアガンになります。

これを極端にしたものがいわゆる流速チューンで、非常に短いバレルと強いスプリング、大量のエアーを使って、強いホップで撃ち出すものです。ホップをかけるほど弾速が上がるので、高い弾速と高回転を同時に得ることができ、射程を延ばすことができますが、持っているエネルギーが多いので「当たると痛い」という特徴もあります(銃刀法では弾速しか測定しないので、回転エネルギーはどれだけ高くても法に触れません)。スプリングも強いので、メカに与える負荷が高く、あまりおすすめはしません。

非常に軽いBB弾に回転をかけて弾道を制御する関係上、ホップアップシステムには高い精度が求められます。海外製のエアガンは弾速規制が緩い関係で、パワーにものを言わせて飛ばすことができるので、このあたりの精度があまい傾向があります。精密射撃に海外製を使うのであれば、ホップアップ周りは精度の良いパーツで組みなおした方がいいかもしれませんね。

2016年9月18日日曜日

ガスガンに使用できるガス

はじめに


前回CO2を使用するBBガンが出てきましたが、この機会にガスガンのパワーソースであるガスについて考えてみましょう。
ガスと言ってもなんでもいいわけではなく、エアガン専用のガスがいくつか存在します。今回はそれを紹介しようと思います。

1. HFC-134a



現在最もメジャーなガスです。いわゆる代替フロンガスです。
ガスガン用のガスの中ではバランスがよく、気化温度が低めなので、フロンガスの中では冷えに強い方です。不燃性なので、ガス自体の安全性は比較的高い部類でしょう。
大抵のガスガンはHFC-134aでの利用が推奨されています。

ただし、地球温暖化係数が非常に高いので、既に廃止が決まっています。代替ガスは現在さまざまに検討されているようですが、まだ製品としては出てきていません。

パッキンに対する攻撃性が低いので、保管時にガスを入れっぱなしにしておかなければならないタイプのマガジンには、これをおすすめします。

2. HFC-152a



HFC-134aに次いでメジャーなガスです。これも代替フロンガスです。ガスガン以外にはエアダスターに使われていたりします。
気化温度はやや高めで冷えに弱く、可燃性という欠点がありますが、HFC-134aより安価なのが特徴です。また、地球温暖化係数もHFC-134aよりは低い方です。

パッキンに対する攻撃性がやや高いので、入れっぱなしで保管するのには向いていません。
HFC-134aとは価格差があるので、夏場にバリバリ使うのにはこちらの方がいいかもしれません。

3. CO2(二酸化炭素)



誰でも知っている二酸化炭素ガスです。
上記2つのガスとは全く違って、このガスは普通のガスガンには使えません。専用に設計されたガスガンが必要です。

CO2は主にビール等を生産した際に発生したものを再利用しているので、環境負荷が各段に低いのが特徴です。圧力が高く、冷えに強いので、対応したガスガンでは素晴らしい作動性を誇ります。また、当然不燃性で、パッキンへの攻撃性もありません。

ただ、圧力が高すぎるのが問題で、他のガス用に設計されたガスガンにこのガスを使用して、うっかり作動できてしまうと、確実に銃刀法違反のパワーが出てしまいます。専用のガスガンが必要というのはこういうことです。

4. 空気


マガジンに充填することはできませんが、これもひとつのパワーソースになりえます。コンプレッサーで圧縮した空気をホースを通じてマガジンに導入し、作動させます。

これも高圧になることがあるので、きちんとレギュレータで減圧しなければなりません。エアガン専用の高圧にならないレギュレータがあるので、それを使用し、できれば途中にリリーフバルブを入れておきましょう。
ガスガンのハンマースプリングを弱くして、高圧時に作動しないようにしておくのもとても有効です。

当然ながら、可燃性はなく、最も環境に優しいパワーソースです。

適法性について


せっかくなので、ガスガンのパワーソースの適法性について、少し説明しておきましょう。
よく、「CO2は違法だ」「外部ソースは違法だ」と言う方もいますが、ガス自体には違法性はありません。ガスガンのパワーソースで違法になるポイントは2つあります。

ひとつはもちろん弾速です。CO2のような高圧ガスを使った場合、低圧ガス用のガスガンでうっかり作動してしまうと、ほぼ確実に弾速が法規制値をオーバーします。幸い、国産のエアソフトガンは高圧マガジンのバルブを作動させられるようなハンマースプリングは入っていませんが、交換していたり、元々固いスプリングのモデルだったりすると、まずいことになります。

もう一つは、充填です。CO2のような高圧ガスは、高圧ガス保安法で容器の移し替えが規制されています。トイガン用のCO2マガジンは、12g入りの小型のボンベをそのまま挿入して使うようになっているのですが、専用マガジンを使わずにフロンガス用のマガジンに移し替えてしまうと、それだけで違法になります。それ以上に、耐圧性能がCO2用に設計されていないので、破裂するおそれがあり、非常に危険です。絶対にやらないようにしてください。

高圧ガスによる作動を楽しみたいと思ったら、日本の規制に完全に適合したCO2専用モデルが、マルシン工業から発売されています。まだ普及途上なのでランニングコストは高いですが、真冬でも強烈な作動が楽しめるので、非常におすすめです。

2016年9月17日土曜日

オハイオ州の警官による少年射殺事件について

はじめに


解説記事を書こうと思ったのですが、今回はちょっと違う内容です。
またアメリカで痛ましい事件が起きてしまいました。13歳の少年が警官に射殺されてしまったそうです。

http://www.afpbb.com/articles/-/3101110

最初このニュースを知った時、やりすぎだろうと当然のように思ったのですが、日本語記事のへんなところに気がつきました。「BBガン」という表現です。
通常マスコミはおもちゃの銃のことをモデルガンまたはエアガンと呼びます。BBガンという耳慣れない表現を使ったのにはわけがあるはずです。少し調べてみました。


1. 英語の記事ではどう書かれているか


翻訳でおかしくなった可能性もあるので、まず英語のソースを探してみましょう。

https://www.yahoo.com/news/ohio-police-fatally-shoot-13-old-drew-bb-151134347.html

上記記事の英語版です。ここでもBBガンと書かれています。
通常、英語圏では、エアソフトガンはAirsoftと書くはずです。この時点で、私たちがよく知っているエアガンとは別物であると考えられます。では、BBガンとはいったい何でしょうか。


2. 発端となったBBガンは何か


記事にもあるように、BBガンとは「低性能のエアガン」です。調べた結果、少年が所持していたBBガンの情報がありました。

https://twitter.com/ColumbusPolice/status/776502381634850817

これは、UMAREXのXP40というモデルのようです。

https://www.midwayusa.com/product/246573/umarex-40xp-blow-back-air-pistol-177-caliber-bb-black-factory-reconditioned

日本円にして約5000円ちょっとの安いモデルです。
が、これで正体がわかりました。


3. BBガンとは何か


今回のモデルは4.5mmのBB弾をCO2で撃ち出すものです。先のページによると弾速は400fps、メートルにして約122m/sです。日本のエアソフトガンが0.2gの6mmBB弾で約98m/sが上限ですから、弾が小さくて軽いと考えると大したことはなさそうです。

しかし、実際はこのモデルは日本では完全に実銃として取り締まりの対象になります。さっきのモデルに対応した弾をウォルマートで探してみましょう。

https://www.walmart.com/c/kp/-177-bb-guns-pellets

leadとかsteelとか書いてあります。つまり、対応するBB弾とは、金属製の弾です。
要するに、「低性能のエアガン」とは、エアソフトガンのことではなくて、日本では実銃とされ、狩猟や競技に使われる、空気銃のことでした。
この弾はおよそ0.33gです。それほど重くないように思えますが、小さいので貫通力が高く、100m/sもあれば皮膚を簡単に貫き、骨を砕くくらいの威力があります。

とはいえ射程は短いので、警察が使う装薬銃(オートなら9mmか.40S&Wでしょう)に比べれば圧倒的に低性能ではあります。
しかし、アメリカではエアソフトガンはそれとわかるように、銃口または全体をオレンジにしなければなりません。しかしこのモデルはそういう規制対象外……つまり、「銃」として扱われてしまうものです。
静止を指示している警官に対してそれを取り出したことで、こんなことになってしまったわけです。


まとめ


今回の事件、少年が所持していたのがある程度の殺傷能力がある空気銃であること、警官の指示に従わずそれを取り出したことなど、一方的な見方はできないかなと思います。
とはいえ警官が少年を射殺したことは事実ですし、それに対する是非を問うことは私にはできません。

まずは何よりも、少年の冥福を祈り、類似の事件が起きないことを祈るほかありませんでした。

2016年9月16日金曜日

バッテリーの種類と扱い方(リチウムフェライトバッテリー編)

つづきから


今回は、もうひとつのリチウム系バッテリーである、リチウムフェライトバッテリーについて解説しましょう。

4.リチウムフェライトバッテリー


リチウムフェライトバッテリーは、正極(+)にリン酸鉄リチウムを使用したリチウムバッテリーです。「リフェ」と呼ばれることもあります。電動ガンで正式に採用したものはありませんが、タミヤのラジコンの純正バッテリーはこれです。

リチウムフェライトバッテリーの最も良い点は、リチウムポリマーバッテリーに比べて、比較的安全性が高い点です。ニッカドバッテリーほどではありませんが、過放電に比較的強く、リチウムの析出によるショートの可能性も低いという特徴があります。
また、メモリー効果がなく、充放電できる回数も多め、自然放電も少ない、と、非常に使い勝手のいいバッテリーと言えます。
さらに、製造メーカーにもよりますが、高い電流で急速充電が可能なものもあります。

一方、リチウムポリマーバッテリーよりは出力が低めです。とはいえニッケル水素バッテリーよりは高出力なので、これはさほど欠点とは言えないでしょう。

むしろ、1セルあたりの定格電圧が3.3Vなので、電動ガンに使うには2セルの6.6Vでは低すぎ、3セルの9.9Vでは高すぎる、という中途半端な電圧が問題です。全くカスタムしていない電動ガンに使うには少し向いていないバッテリーと言えます。せっかく安全なバッテリーなのに、残念なところです。

リフェバッテリーもリチウム系バッテリーなので、バランス充電が必要です。1セルあたりの最大電圧は約3.6Vとされています。どんなバッテリーでも過充電は危険なので、必ず監視の下で充電するようにしてください。

比較的安定したバッテリーなので、ぜひおすすめしたいところなのですが、前述の「電圧が中途半端」という特徴がいろいろと台無しにしている面もあります。標準で3セル9.9Vのリチウムフェライトバッテリーが使える電動ガンが出てきてくれると、初心者にも進めやすくてうれしいのですが、今のところ出てきていません。

まとめ


バッテリーにはいくつも種類がありますが、どれも一長一短で、これを買っておけば完璧というものはありません。

個人的にはリチウムポリマーバッテリーをおすすめしたいのですが、取り扱いを誤ると危険なものでもあるので、管理をきちんとできる自信がないのであれば、純正のニッケル水素バッテリーを使うのがいいかもしれません。とはいえ、これも管理をしないとすぐ壊れてしまうので、そこまで手軽ではありません。
実のところ、容量が少ないことを除けば、ニッカドバッテリーが一番扱いやすいバッテリーと言えるのかもしれませんが、環境への影響を考えて生産数が少なくなっているので、今後を考えると選択肢としては挙げにくいのも事実です。

とはいえ、バッテリーはあの小さなサイズにモーターを動かすだけのエネルギーを蓄えているので、どれを選んでも本質的には非常に危険なものです。適切な使い方を学ぶことが、安全への第一歩です。面倒くさいなどと思わずに、バッテリーの特徴を知り、自分の使い方に合わせて各自選択していただくしかないと考えます。

2016年9月15日木曜日

バッテリーの種類と扱い方(リチウムポリマーバッテリー編)

つづきから


今回はより高性能なバッテリーである、リチウム系のバッテリーです。
ただし、ニッカド系のバッテリーよりも扱いが面倒なところがありますので、どちらかといえば上級者向けのバッテリーと言えるかもしれません。

3.リチウムポリマーバッテリー


現在はさまざまな電子機器にバッテリーが使われていますが、その中でも最も使われているものがこのリチウムポリマーバッテリーです。「リポ」とも呼ばれます。正極にリチウム系化合物、負極に炭素、電解液に有機溶媒を用いることが多いバッテリーです。

リチウムポリマーバッテリーは、電解液がポリマーによってゲル状になっているリチウムイオンバッテリーです。そのため、電解液が液体状のその他のバッテリーとは異なり、缶に入れる必要がないため、さまざまな形状に加工することができます。スマートフォンのバッテリーのように、薄く作ることもできます。

バッテリーの特徴としては、サイズに対して容量が大きく、一度に取り出せる電流も大きいという点が挙げられます。そのため、電動ガンに使うと、とてもニッカドバッテリーやニッケル水素バッテリーでは入らないような小さな空間にも収めることができる上、モーターの初動に必要な大電流も容易に供給することができます。結果として、射撃のロックタイムを短くすることができます。
また、自己放電がほとんどなく、充電された状態のまま放置しても、電圧は長い間残っています。メモリー効果もほとんどないので、継ぎ足し充電も自由に行うことができます。

しかし、リチウムポリマーバッテリーには大きなデメリット、というよりも危険性があります。電解液が有機溶媒であるため、きわめて引火性が高く、取り扱いを誤ってショートさせてしまうと、発火、爆発するおそれがあることです。このため、飛行機の貨物室での輸送は現在では禁止されています。

また、過放電や過充電にきわめて弱く、これらを行った場合、内部で水素ガスが発生して破裂したり、リチウムが析出してショート、炎上したりするおそれがあります。そのため、リチウムポリマーバッテリーの充電には、電圧センサーとマイコンを使用した高度な専用充電器が必要です。スマートフォンやノートパソコンはこれらの充電回路を内蔵しているので、単にコンセントを差すだけで充電できますが、電動ガンは生のバッテリーセルを使用するので、充電器側に回路が必要です。

リチウムポリマーバッテリーは1セルあたりの電圧が約3.7Vと高いため、電動ガンには2セル(定格7.4V)または3セル(定格11.1V)のものがよく使われます。先に述べたように、過放電と過充電に弱いため、ニッケル系バッテリーのように直列接続されたバッテリーに放電端子からそのまま充電することはできません。

ではどうするかというと、複数セルを直列して作られたリチウムポリマーバッテリーモジュールには、必ずバランス端子という、各セルに「並列に」接続された端子が存在します。この端子を使うと、各セルに個別にアクセスできるため、この端子から充電や放電をしながら、各セルの電圧が一定になるように充電を行うのです。これをバランス充電と呼びます。リチウムポリマーバッテリー対応の充電器は、このバランス充電に必ず対応しています。

リチウムポリマーバッテリーの扱い方ですが、まず何よりも、絶対に過充電は避けてください。対応した充電器を使って、2セルなら2セル用の、3セルなら3セル用のモードを使い、低めの電流で正しく充電します。絶対にニッケル系バッテリー用の充電器を使って充電してはいけません。火災の原因になります。
また、高い電流で急速充電することもできません。充電時に流せる電流は、容量と同じと考えてください。2000mAhのバッテリーなら2A、700mAhのバッテリーなら0.7Aです。ただし、最大電流で充電すると寿命が短くなる傾向があるので、少し低めにしておくといいでしょう。

過放電も厳禁です。1セルあたりの下限電圧はおよそ3Vなので、これを下回った状態にしてはいけません。電動ガンの動きが鈍くなってきたと感じたら、すぐに使用をやめてください。
リチウムポリマーバッテリーは出力が安定していて、容量が減ってきても電圧が高いままなので、電動ガンが普通に動いてしまいます。完全に動かなくなるまで使うと、もう下限電圧を下回っていることがあります。
電動ガンとバッテリーの間につないで使う電圧監視装置や、電動ガンが電子制御式の場合はバッテリーの電圧を監視する機能が付いていることがあるので、それらを活用するのもひとつの手でしょう。
もしも万が一下限電圧を下回ってしまった場合は、そのバッテリーは適切な方法で廃棄してください。使用を継続するのは危険です。

また、使用しない時は定格電圧よりも少し高い程度、例えば2セルの定格7.4Vバッテリーであれば、7.6V程度にしておくのがベストです。リチウムポリマーバッテリーは満充電状態で放置すると劣化し、ガスが発生して膨らんでしまうので、満充電での保管は避けてください。充電器によっては、保管用に適した電圧にしてくれるストレージ充電モードがあるので、それを活用すると簡単です。

最後に、これはどのバッテリーでも同じことですが、高温になる場所には放置しないでください。特に、真夏のフィールドの駐車場で、車の中にバッテリーを放置するときわめて危険です。

リチウムポリマーバッテリーは扱いが難しく、非常に癖のあるバッテリーですが、軽量で容易に高出力を得ることができるので、人気のあるバッテリーです。価格もかなり安価なので、ニッケル水素バッテリーの作動に不満が出てきたら、導入を検討してもよいでしょう。
ただし、リチウムポリマーバッテリーの取り扱い方法は必ず守ってください。充電しながら居眠りするようなことは、絶対にしないようにしてください。

つづきます


リチウムポリマーバッテリーは広く使われている割に、使い方を誤るとかなり危険なバッテリーなので、つい解説が長くなってしまいました。細かい使い方がわからなければ、コメントで質問していただいても構いませんので、どうか安全を心掛けて使うようにしてください。

次回はもうひとつのリチウム系バッテリーを紹介します。

2016年9月14日水曜日

バッテリーの種類と扱い方(ニッケル系バッテリー編)

はじめに


エアーコッキングガンを除いて、ほとんどのエアガンは作動させるためにパワーソースが必要です。
ガスガンならガス、電動ガンならバッテリーになりますが、それぞれいくつも種類があって、最初のうちは悩んでしまうかもしれません。特に、電動ガンのバッテリーは種類によって特性が全く違うので、私も初めて充電した時はどこまで充電されればいいのかわからず、悩んだこともありました。
というわけで、今回はバッテリーについて説明したいと思います。

電動ガンのバッテリーは、要するに電池です。市販の乾電池にもいくつも種類があるように、電動ガン用のバッテリーにもいくつかの種類があります。


1. ニッカドバッテリー


最も古くからあるバッテリーです。正極(+)に酸化水酸化ニッケル、負極(-)にカドミウム、電解液に水酸化カリウム水溶液を使用したバッテリーです。
以前はよく使われていましたが、カドミウムが強い毒性を持つため、現在では需要が減ってきており、電動ガン用のバッテリーも少なくなってきています。

ニッカドバッテリーは一度に取り出せる電流が大きく、モーターの作動に向いていたため、電動ガンやラジコンにはよく使われていました。過放電にも強く、完全放電状態であっても、充電すれば大抵の場合使えるという頑丈なバッテリーでもあります。
また、急速充電が可能で、高めの電流で充電することができます。

一方、容量は比較的少なめです。おまけに自然放電しやすいという特徴があり、たとえ満充電にしておいても、しばらく経つと空になっていることがあります。
また、メモリー効果があり、継ぎ足し充電をすると容量が減ってしまうため、放電器を使って完全放電してから充電する必要があるという、やや面倒くさい特徴があります。

セル1つあたりの電圧は約1.2Vで、電動ガン用のバッテリーとしては6セル直列の7.2Vから、12セル直列の14.4Vまであります。とはいえ、通常は7.2V~9.6Vまでを使用することになると思います。それ以上は内部カスタム済みの電動ガン専用で、通常のものに使用すると、壊してしまう可能性が高いです。

ニッカドバッテリーの扱い方ですが、基本的には使う直前に放電器で放電して、空になった状態から満充電にするだけです。先の通り、比較的頑丈なバッテリーなので、使い終わったらそのまま涼しいところに保管するだけで十分でしょう。


2.ニッケル水素バッテリー


ニッカドバッテリーに次いで出てきたバッテリーです。「ニッ水」とも呼ばれます。正極に(+)ニッケル化合物、負極に(-)水素化合物、電解液にアルカリ水溶液を使用したバッテリーです。
東京マルイの現在の純正バッテリーはこのバッテリーです。

ニッケル水素バッテリーは容量が大きく、ニッカドバッテリーに使われているカドミウムのような強い毒性のある物質を使用しないので、比較的安全なバッテリーです。
メモリー効果はありますが、ニッカドバッテリーほどではないため、継ぎ足し充電することもできます。

一方欠点としては、電動ガンに使われているものは自然放電しやすく、かつ過放電に弱いため、定期的に充電しないとバッテリーが壊れてしまうという点です。いい加減な管理で過放電してしまうと、もうそのバッテリーは使用できません。しかも、ニッカドバッテリーと違い、急速充電を行うことはできません。
また、出力がニッカドバッテリー程大きくないので、モーターの初動のトルクに劣ります。トリガーを引いてからBB弾が発射されるまでのタイムラグに影響を与えることがあります。

セル1つあたりの電圧はニッカドバッテリーと同じです。電動ガン用のバッテリーとしては、8.4V~9.6Vあたりが主流です。高電圧のものがあまりないのは、後述するリチウムポリマーバッテリーが普及して、そちらの方がより高出力にできるため、カスタム用にはニッケル水素バッテリーはあまり使われないからです。

ニッケル水素バッテリーの扱い方ですが、過放電すると壊れてしまうので、定期的に電圧を測定して、定格電圧を保つようにしてください。例えば、8.4Vのバッテリーは満充電すると9.2V程度まで電圧が上がりますが、これが8.4V程度の場合は、充電した方がいいでしょう。
ニッケル水素バッテリーは容量が減ってくると出力が大幅に下がるので、電動ガンを使いすぎて過放電になることはまずありません。動かなくなったら交換して、早めに充電する程度で十分です。


つづきます


他にもバッテリーの種類はあります。次回はリチウム系バッテリーについて解説します。

2016年9月13日火曜日

BB弾の種類と分類(材質編)

つづきから


前回に引き続いて、BB弾についての解説です。今回は材質に注目してみましょう。


3. 材質


具体的な成分は置いておくとして、その特性を見ると大きく3種類あります。


3.1 プラスチック弾

プラスチック弾は、ABS等のプラスチックを主成分としたBB弾です。比較的精度のよいBB弾が多く、価格も後述するセミバイオ弾、バイオ弾に比べて安価です。
プラスチックなので、土の中に埋めておいても、ほぼ分解されないことから、現在ではアウトドアフィールドでの使用はほぼ禁止されています。一方、インドアフィールドではどちらにせよ掃除が必要なので、使用が許可されていることが多いでしょう。



3.2 セミバイオ弾

セミバイオ弾は、硫酸バリウムや石粉等を主成分にした「いつかは風化して消える」BB弾です。一応分解されますが、完全に分解されるには相当長い時間がかかるため、プラスチック弾に準ずる扱いを受けていることがほとんどです。
特性も似ているので、ほぼプラスチック弾と考えて差し支えありません。



3.3 バイオ弾

バイオ弾は、ポリ乳酸等を主成分にした「微生物によって分解されて消える」BB弾です。土の中に埋めておくと数年で分解されるので、ほとんどのアウトドアフィールドではこのタイプのBB弾の使用が義務付けられています。もちろんインドアフィールドでも使用できます。

汎用性が高いのですが、最大の欠点として「湿気る」というものがあります。バイオ弾は生分解性を持つためか、水分を吸収して膨らむ傾向があるため、パッケージを開けて放置すると精度が低下してしまいます。また、熱にも弱いため、夏場の車の中などに放置すると、あっという間に劣化します。劣化したBB弾を使用するとエアガンにダメージを与えることがあるので、気を付けなければなりません。

通常、開封しなければ密封されているため問題はありませんが、ショップによっては温度管理がされていないことがあり、その時点で劣化していることがあるため、要注意です。できるだけ回転の良いショップで購入することをおすすめします。



この他、特殊なものとして蓄光BB弾があります。



3.4 蓄光弾

蓄光弾は、トレーサーと呼ばれる装置で強力な光を与えることにより、一定時間蛍光を放つBB弾です。プラスチック弾とバイオ弾があります。

主に夜戦で使用されるもので、連射速度の高い銃でフルオート射撃を行うと、綺麗な一直線の弾道をはっきりと見ることができます。また、弾道がよく見えるので、サイトやホップの調整も非常にしやすいというメリットがあります。
一方、製造しているメーカーが少なく、精度のあまりよくないものが多いため、弾を選ぶ傾向のあるエアガンにはなかなか使いにくい、という難点があります。また、トレーサーを付けられないエアガンに使う意味は全くありません。



まとめ


これまでに挙げたように、BB弾は特性の違うものが各種あります。特に重量は好みもあるので、一概にこれを買っておけばいいとは言いにくいものです。

しかし、BB弾の選択は、エアガンを使う上で非常に重要です。安売りされているものを安易に使うのではなく、評判の良い高品質なものを極力使った方が、精度もさることながら、エアガン自体の寿命も延ばします。

あえておすすめを挙げるのならば、東京マルイのベアリングバイオ弾0.2gまたは0.25gか、G&Gのバイオ弾0.2gまたは0.25gをおすすめします。精度もさることながら、品質が非常に安定しており、ロットによるばらつきがほとんどありません。サイズも標準的で癖がないので、迷ったらとりあえずこれを買っておけば、どこのフィールドでも、どのエアガンにも使えます。インドアフィールドであれば、上記のプラスチック弾仕様でもいいでしょう。

     

2016年9月12日月曜日

BB弾の種類と分類(サイズと重量編)

はじめに


これまで何回かに分けてエアガンの種類を説明してきました。作動させるためのパワーソースにはいくつもありましたが、BB弾を発射させるには必ず必要なものがひとつあります。そう、BB弾自身です。

BB弾と一口に言っても、そのサイズ、重量、材質といった特徴によっていくつかの種類に分けることができます。


1.サイズ


見た目ですぐ分かる違いがサイズでしょう。現在大きくわけて2つの種類があります。

1.1 6mmBB弾

最もメジャーな寸法のものが、この直径6mmのBB弾です。正確には、5.95mm±0.1mm程度の寸法で作られているものがほとんどです。
6mmBB弾は現在のほとんどのエアガンで使われています。大抵は各社互換性がありますが、かつてマルシン工業から発売されていたSMブルーBB弾はやや径が大きく、今の6mmBB弾とは互換性がないので注意してください。
6mmBB弾を使用する場合の上限エネルギーは0.989Jです。これを上回った場合、準空気銃という実銃扱いとなります。



1.2 8mmBB弾

マルシン工業が開発したものがこの8mmBB弾です。マルシン工業ほか、海外製のいくつかの製品にこれを採用しているものがあります。
8mmBB弾は口径が大きいため、弾速はあまり高くないですが、持っているエネルギーが大きいので、着弾音が大きく、迫力のある射撃が楽しめます。ただし、空気抵抗が大きいので射程は短いです。どちらかといえばモデルガン的な楽しみ方をする銃向けでしょう。
8mmBB弾を使用する場合の上限エネルギーは1.758Jです。



この他、4.5mmBB弾というものもありますが、これは海外でCO2ガスガンに使用するもので、日本の玩具に使われることはありません。これを使うものは日本国内ではよくて準空気銃、悪ければ空気銃
になります。
エアガンでは基本的に6mmBB弾を使うことが多いので、今回は6mmBB弾についてこれ以降解説していきます。


2.重量


同じサイズのBB弾であっても、材質と成分の関係で重量が変わってきます。各社バラバラではなく、だいたい同じ重量のBB弾をラインアップしています。


2.1 0.12g

0.12gBB弾は、6mmBB弾の中で最も軽い部類に属します。重量が軽いので弾速が高いですが、慣性が小さいので風に煽られて弾道が乱れやすく、空気抵抗にも弱いため弾速の低下も早いので、近距離射撃向きです。
基本的にはパワーの無い10歳以上用のエアガンに使われますが、複数発同時に発射できるショットガンに使うと、近距離でも大きく散らばったパターンを実現できます。



2.2 0.20g

0.20gBB弾は、最も使われている6mmBB弾です。重量と寸法のバランスが良く、18歳以上用のほとんどのエアガンに対応します。一方、10歳以上用のエアガンには重すぎるため、すぐに弾が落ちてしまいます。
比較的軽量な弾なので弾速を稼ぎやすく、適切に設計されたエアガンであれば、だいたい30mほどはフラットに飛びます。サバゲーでは、障害物の少ない都市型のフィールドでの使用に向いています。ブッシュの多い森林型フィールドでは、草木の葉に当たってはじかれてしまいやすいので、もう少し重量のある弾のほうがいいでしょう。



2.3 0.25g

0.25gBB弾は重量弾の部類に入ります。わずか0.05g重いだけですが、その分弾道の直進性がよく、長距離の精密な射撃に向きます。ブッシュを抜くのにも向いているので、森林型フィールドでの使用に向いている他、精密射撃などの競技用にも使われます。
重量があるため、エアガンによっては初速の落ち込みが激しくなります。また、価格がやや高くなるので、マシンガンのような弾幕を貼るタイプのエアガンにはあまり向いていません。どちらかといえばスナイパーライフルやマークスマンライフル向きの弾と言えます。



2.4 0.28g

0.28g弾は相当重量級の弾です。直進性は良いですが、射程は短くなります。また、至近距離で当たると相当痛いので、サバゲーではあまり推奨されません。
30mチャレンジのような、銃の精度を測定する競技に向いています。精度のよい0.28gBB弾をこれまた精度のよいエアーコッキングガンで30m先を撃つと、10発撃ち込んで10cm以内に集弾するようにすることもできます。これは0.2gBB弾ではかなり難しい数値です。


2.5 0.3g以上

0.3gBB弾は非常に重く風の影響を受けにくいことから精密射撃に使われることがありますが、サバゲーではまず使われることはありません。射程が短いためです。
また、それ以上の重量の弾は、合法に所持できるエアガンではほとんど飛びません。パワー規制の緩い海外向けの弾だと考えてください。


つづきます


例によって長くなってしまったので、続きは次回にしましょう。次回は材質について書いてみたいと思います。

2016年9月11日日曜日

電動ガンの種類(作動方式編3)

つづきから


今回はシアー式です。この方式を採用した製品は多くはありませんが、とても面白い特徴を持っています。

3.シアー式

最初にエアソフトガンの種類を紹介した時、「電動ガンとはエアーコッキングガンをモーターで自動化したもの」と示したような気がしますが、まさにこのシアー式はそれそのものです。

シアー式の場合、モーターがピストンを後退させるところまではほぼ一緒ですが、完全に後退しきった時点でピストンをシアーが固定します。モーターの動作はこの時点で終了します。
トリガーを引くと、シアーが倒れてピストンが前進し、BB弾を発射させるわけです。このあたりの動作は完全にエアーコッキングガンと同じです。

シアー式が面白いのは、BB弾を発射後、モーターが再始動し、ピストンを後退させた状態まで持ってくることです。
機械スイッチ式は「トリガーを引くとピストンが後退し、後退しきったら前進してBB弾を発射する」がひとつのサイクルであるのに対して、シアー式は「トリガーを引くとピストンが前進し、BB弾を発射、その後ピストンが後退してシアーで保持される」という動作になります。
ちなみに、最初の1発は基本的に手動でコッキングするので、これだけを見ると完全にエアーコッキングガンと一緒です。実際、電源を入れなければ、エアーコッキングガンとして撃つことができるモデルがほとんどです。また、使い終わってピストンを前進させておくには、電源を切って1発発射すれば、ピストンは後退しないので、そのまま保管できます。

さて、このピストンの動作ですが、何かに似ているような気がしませんか?

これは、ガスブローバックガンのアフターシュートブローバックとプレシュートブローバックの関係に似ています。弾が出る前に後退するか、弾が出た後に後退するかの違いです。
電動ガンでモデルアップされるようなロングガンの場合、重量があるので、軽いピストンの動作の反作用で大きく銃口がぶれてしまうことはまずありません。しかし、ピストンが後退状態から作動を開始するので、原理上ロックタイムを最短にすることができます。

ただし、シアー式はその構造上、部品点数が多く、メンテナンスが非常に難しいという欠点があります。
現在販売されているシアー式は、KSCのHK33/53シリーズと、TOPのUltimate Ejection Electric Blowbackシリーズですが、これらのどちらも作動に関するパーツが非常に多いため、個人でのメンテナンスが全く推奨されていません。また、組み込みが難しいためか、内部のカスタムパーツもほとんど発売されていません。

ちなみに、KSCとTOPのシアー式はそれぞれ構造が違っています。
KSCは完全に機械でタイミングを取っていて、最初の一発を撃つ前に手動でコッキングせずに電源を入れてしまうとタイミングがずれから破損してしまうため、発売当初は「壊れやすい」との評判が立ってしまいました。実際は正しく使えばそう簡単には壊れないのですが、機械スイッチ式に慣れた人は「ついうっかり」をしてしまいがちだったのも、原因のひとつでしょう。
若干トリガーは重いですが、独特の撃ち心地はとても気持ちの良いものです。


TOPの方式はさらに洗練させたもので、ピストンの位置をセンサーで検出しています。これにより、ピストンが完全に前進しない限りモーターを回転させないようにしているので、タイミングずれによる破損を防いでいます。他にも、最初のコッキングを全て手動でやらずに、ほんの少し引いてから戻すと、モーターが自動でコッキングするアシスト機能や、個別の電源スイッチを持たず、マガジンを入れなければ電源が入らない機能を持っています。
ちなみにTOPのシアー式電動ガンはボルトキャリアが完全に動作するようになっていて、しかもライブカート式も存在するので、電動ガンとは思えないリアルな作動を実現しています。

まとめ


電動ガンはロングガンの作動方式としては最もメジャーなものですが、ここまで述べたように、電動ガンと一口に言っても、さまざまな作動方式があります。
機械スイッチ式が一番リーズナブルで、カスタムのノウハウも多いため、最初の1丁には一番向いていると思います。そのうち、トリガーのレスポンスや射撃感が物足りなくなったら、電子制御式やシアー式に手を出してみるのをおすすめします。電子制御式特有の超高速なセミオート連射や、シアー式のダイレクト感は、一度撃つとやみつきになります。

電動ガンはほとんどがロングガンということもあって比較的高価なものが多いですが、その射撃性能は圧倒的です。サバゲーのみならず、プリンキング用途でも、気持ちよく遊ぶことができるので、予算ができたら手に取ってみることをおすすめします。

2016年9月10日土曜日

電動ガンの種類(作動方式編2)

つづきから


電動ガンの基本はほぼ前回の機械スイッチ式であって、その他の方式は「ピストンの制御をどうするか」という一点に尽きます。
今回は、最近特に人気の出てきた電子制御式について少し書いてみましょう。

2.電子制御式


電子制御式の原点は、おそらくSYSTEMAのPTW(Professional Training Weapon; トレポン)でしょう。東京マルイの機械スイッチ式が特許化されていたこともあって、全く異なる方式が求められていたというのが、たぶん最大の動機かもしれません。

PTWは構造自体が東京マルイの機械スイッチ式とは全く違うのですが、最近は機械スイッチ式の制御を電子制御にする、ドロップインタイプの制御ユニットが発売されています。
ドロップインタイプの制御ユニットを導入すると、動作が次のようになります。

まず、機械スイッチ式ではトリガーを引くといきなりモーターに通電していましたが、電子制御では内蔵CPUに対する制御信号が出ます。これを受けて、制御ユニットはモーターを回転させるため、モーターへの通電を開始します。
射撃システムそのものは機械スイッチ式と全く変わりませんが、カットオフレバーがスイッチを切るのではなく、「カットオフレバーが動作したこと」を表すボタンを押します。これによって、内蔵CPUは通電を終了します。制御ユニットの方式によっては、カットオフレバーを使わず、セクターギアの回転自体を光センサーや磁石で検出するものもあります。PTWは光センサーです。ARESのEFCSメカボックスは磁石を称しています。


基本はこれだけなのですが、これだけでもメリットがあります。
電動ガンがモーターを始動する時、スイッチには相当な電流が流れます。スイッチが接触するその瞬間、まだほんの少し隙間が空いている時、その隙間を無視して電流が流れる、いわゆるスパークが発生します。これによって、電動ガンのスイッチは少しずつ焦げることになります。これをスイッチ焼けといいます。スイッチ焼けがひどくなると、電流が流れなくなってしまうので、最終的に電動ガンは動作しなくなってしまいます。

一方、電子制御式では、トリガーのスイッチは単なる制御信号のON/OFFなので、非常に小さな電流しか流れません。そのため、スイッチが焼けることがなく、耐久性を延ばすことができます。

また、実は機械スイッチ式には「セミオートロック」という現象があります。これは、セミオート射撃中にトリガーを戻したタイミングが悪く、カットオフレバーが跳ね上がった瞬間にちょうど通電が終了してモーターの回転が停止すると、カットオフレバーが中途半端にスイッチを切ってしまい、次にトリガーを引いてもセミオート射撃ができなくなる現象です。
いったんこうなると、フルオートモードに切り替えて射撃しないかぎり、電動ガンは動作しなくなってしまいます。

しかし電子制御式では、カットオフレバーがきちんと作動を終えるまでCPU側でモーターの停止を遅延させることができるので、原理的にセミオートロックは発生しません。トリガーが単なるスイッチで、トリガーのストロークを短くできるという特徴と合わせて、セミオートの高速な連射が可能なので、セミオート縛りでサバゲーをする時に非常に強力です。

BB弾の発射についても、電子制御式にはCPUが乗っているため、細かい制御が可能です。
例えば、「カットオフレバーが3回作動したら通電を停止する」という制御にすれば、3点バーストが実現できます。
さらに、カットオフレバーが作動してモーターを停止する際、逆起電力を利用して電磁ブレーキをかければ、モーターの慣性を殺して、急停止させることができます。これをうまく使うと、ピストンがある程度後退した状態で止めておくことでき、次の射撃でトリガーを引いてからBB弾が発射されるまでの時間、ロックタイムを極端に短くすることもできます(プリコックと呼びます)。
モーターへの通電を常に全開で行うのではなく、細かくONとOFFを繰り返すPWM制御を行えば、フルオート射撃の連射速度を変化させることもできます。
以下はARESのコントローラーです。


機械スイッチ式のシンプルな構造はメンテナンス性もよく頑丈ですが、電子制御式にすると、このように電動ガンのポテンシャルをさらに引き出すことができるようになります。
ただし、精密な電子回路が搭載されることになるので、例えば雨の日に使ったりすると簡単に壊れてしまいます。泥だらけになるような荒い使い方をしたい人は、電子制御式よりも、機械スイッチ式の方が向いているかもしれません。

現在はいろいろ選べるようになっているので、自分のプレイスタイルやユースケースに合わせて、エアガンを選べばいいのです。

さらにつづきます


電動ガンには他にも作動方式があります。次回はシアー式について解説します。

2016年9月9日金曜日

電動ガンの種類(作動方式編1)

はじめに


昨日までガスガンについて書きました。ガスガン、特にガスブローバックガンについては、エンジンの作動方式などいくつか書きたいこともあるのですが、まずはその前に、主要なエアソフトガンの種類について紹介しておきたいので、今回は電動ガンについて書こうと思います。

電動ガンは命中精度もよく、連射も効くので、サバゲーでは一番よく使われている種類です。
各社さまざまな特徴を持つモデルが発売されていますが、今回は作動方式に目を向けて、分類してみることにします。


1.機械スイッチ式


最も主流の方式がこの機械スイッチ式です。といっても、このような名前で呼ばれることはありません。今私が適当に名付けました。最もメジャーで、電動ガンといえばこの方式という時代が長く続いたので、特に名前が付いていないのだと思います。
最初にこの方式を採用したのは、東京マルイのFA-MASです。マイナーチェンジを繰り返しながら、現在でも販売されている、ベストセラー商品です。



機械スイッチ式は、トリガーが単純な接点スイッチになっていて、トリガーを引くと接点が接触して電流が流れ、モーターを回転させる方式です。電動ガンの作動の流れはおおむね次のようになります。

まず、トリガーを引くと、それに連動したスイッチがONになり電流が流れ、モーターが回転します。モーターは、先端のピニオンギアから、べべルギア、スパーギア、セクターギアと回転力を伝え、セクターギアがピストン下部のラックギアを引くことで、ピストンを後退させます。

セクターギアの回転にはもうひとつ連動しているものがあります。これがタペットプレートで、セクターギアが回転するとタペットプレートもピストン同様に後退し、連動してノズルを後退させます。しかし、タペットプレートはピストンに比べてほんの少ししか後退せず、すぐにスプリングの力で前進します。これによって、ノズルはBB弾を拾い上げ、チャンバーに装填します。

一方、継続して後退しているピストンですが、セクターギアのラックギアとかみ合う歯は全周にわたって付いているわけではないので、やはりそのうちかみ合いが外れます。すると、抑えるものがなくなったピストンはスプリングの力で前進し、シリンダー内の空気を圧縮、ノズルから噴出させて、BB弾を発射する、という流れになります。

フルオート射撃しかできない銃の場合はこれだけで事足りてしまうのですが、大抵はセミオート射撃がありますから、もう少し仕組みがあります。
実は、セクターギアの回転にはもうひとつ、「カットオフレバー」というパーツが連動しています。セミオート射撃モードでは、セクターギアがある程度回転すると、カットオフレバーを跳ね上げて、スイッチの接触を強制的に切ってしまいます。スイッチが切られるとモーターは少しの間惰性で回転しますが、最終的には止まりますから、単発射撃になります。ここで切られたスイッチの接触は、トリガーをいったん戻すことでリセットされます。

なお、モーターが惰性で回転すると、一発射撃した後ピストンを少し引いてしまうことがあります。これを放置すると、スプリングの力に負けてピストンが前進し、2発目が弱々しく飛び出してしまうので、それを防ぐために、べべルギアに「逆転防止ラッチ」がかみ合うようになっています。ギアが逆回転しないようになっているので、仮にピストンが少し引かれてしまっても、そのままその位置で停止する仕組みです。

一見複雑なようですが、これらすべてがギアとスプリングの組み合わせで連動動作しています。これらのタイミングがほんの少しずれるだけで、例えばBB弾が発射されなかったり、逆に2発発射されてしまったり、偶数発目がヒョロヒョロだったりと、さまざまなトラブルを引き起こします。

よく設計されている電動ガンはメーカー出荷時の状態がもっともバランスのいい状態なので、故障するまではそのまま使って、おかしくなってから開けてみるようにした方がいいでしょう。あるいは、練習のためにあえて壊れているものを入手するのもいいかもしれませんね。


つづきます


電動ガンは今にいたるまでほぼこの機械スイッチ式のみだったのですが、最近はより高度な制御が可能な方式が生まれています。次回はそのうちのひとつ、電子制御式について書きたいと思います。

2016年9月8日木曜日

ガスブローバックガンの種類(作動方式編2)

つづきから


続いてしまいました。では、プレシュートブローバックガンについて説明しましょう。


2.プレシュートブローバック


プレシュートブローバックは、アフターシュートブローバックの逆で、BB弾が発射されてからスライドが後退する方式です。
作動方式は各社いろいろ工夫が凝らされていて、それぞれに特徴があるので、細かい仕組みは後日書く予定の別記事に譲りますが、簡単な説明だけはいつものようにしておこうと思います。



まず、初弾はアフターシュートブローバックと同じように手でスライドを引いて装填します。その状態でトリガーを引いてバルブを開放すると、まずバレル方向にガスが流れてBB弾が発射されます。
BB弾が発射されると、シリンダー内のバルブが切り替わり、シリンダーにガス圧がかかります。シリンダーにはスライドに固定されたピストンが入っているので(逆にスライドがシリンダーになっているものもあります)、ガス圧が上がるにつれてスライドが後退し、一定の距離スライドが下がるとバルブが閉鎖して、あとは慣性でスライドが下がる、という仕組みです。

バルブの切り替え方法やスライド内の構造に各社少しずつ違いはありますが、基本的な作動方式はほぼ同じです。
アフターシュートブローバックとは違い、BB弾が発射してからスライドが後退するので、スライドの後退の反作用で銃口が下がるのは、発射後になります。そのため、比較的狙ったところに当てやすい仕組みになっています。

一方、仕組みの説明を見て分かった方もいるかもしれませんが、スライドの後退に使ったガスはそのまま排出されてしまうため、アフターシュートブローバックに比べて燃費は悪くなります。とはいえ、現在でも改良されている方式なので、純粋な性能ではこちらの方がはるかに上です。


まとめ


実はこの他にもミドルシュートブローバックという中間的なものもあるのですが、数も少ないので今回は割愛させていただきました。
ガスブローバックガンは液化ガスを気化させて使う都合上、どうしても冷えに弱いという特徴があります。9月に入って少し秋の雰囲気になってきましたが、まだまだ暑い日が続いていますので、今のうちに楽しんでおくことにしましょう!

2016年9月7日水曜日

ガスブローバックガンの種類(作動方式編1)

はじめに


さて、いよいよガスブローバックガンについて書きたいと思います。ガスブローバックガンは全てオートマチックガンを再現するために使われています(前回ボルトアクションのガスブローバックが発表されたこともあったと書きましたが……結局出ていません)。
現代の主流製品のひとつだけあって、書きたいことがいろいろあって困るのですが、今回は歴史の勉強もかねてBB弾の発射タイミングから分類してみたいと思います。
「発射タイミング?」と思った方は、この後の節を読めば、なるほどと思うはずですよ。


1.アフターシュートブローバック


実用的なガスブローバックガンとして最初に開発されたものが、このアフターシュートブローバック方式です。
実際はこの前にも2Wayプレシュート方式というものがありました。途中までトリガーを引くと発射用のバルブが開放されてBB弾が発射され、最後までトリガーを引き切るとスライド作動用のバルブが開放されてスライドが後退する、というものだったのですが、いかんせん効率が悪く、あまり普及しませんでした。
実際にガスブローバックガンがガンファンに知られるようになったのは、このアフターシュートブローバックからでしょう。

アフターシュートブローバックの仕組みはとてもシンプルです。ガスブローバックガンなので、初弾はスライド(ロングガンならボルトキャリア)を手で引いて装填します。これは実銃と同じなので、我慢しましょう。
その状態でトリガーを引いてバルブを開放すると、スライド内のガスチャンバーにガス圧がかかります。これによって、まずスライドが後退する動作が先に発生します。
スライドがある程度後退すると、スライドに連動してガスチャンバーのガスがバレル側に抜け、その圧力でBB弾が発射されます。
つまり、アフターシュートブローバックは、弾の発射前にスライドが後退する方式です。

実銃の場合は当然ながら発射後にスライドが後退するので、全く逆の動作です。アフターシュートブローバックはエアソフトガン黎明期に開発された仕組みなので、そういう意味ではリアリティには若干欠けます。
しかし、スライド後退に使ったガスをそのまま発射に使用するので、燃費がよく、スライドそのものの動きもキビキビとしたものが多くあります。こと作動という点では現在の製品に劣るものではありません。

しかし、2つほど欠点がありました。ひとつは、これは時代的なものも多分にありますが、メカが大きくなってしまっているため、スライドを引くと排莢口(エジェクションポート)からメカが見えてしまうことです。気にしない人(例えば私です)にはどうということもないのですが、モデルガン派には厳しい仕様かもしれません。

もうひとつは、スライドが後退してから発射されるため、スライドが後退する反作用でちょうど銃口が下がったタイミングでBB弾が銃口から出てしまい、狙ったところよりも下に当たる、という特徴です。しかも握り具合でどのくらいブレるかは変わってくるので、上を狙ったとしてもきちんと正しいところに当てにくく、サバゲーならともかく、標的射撃には使いにくいものになっていました。

とはいえ、アフターシュートブローバックを搭載したMGCのグロック17は、トリガーを引くだけでバシッと鋭い音を立てながらスライドが後退する迫力から、当時相当評判がよく、非常に売れたそうです。
やはりオートマチックハンドガンはスライドが派手に動くのも醍醐味のひとつですから、当時多くの人が待ち望んだそれを実現したという点で、アフターシュートブローバックはひとつの転換点になったことは違いないでしょう。

おわりませんでした


今回はちょっと長くなってしまったので、もうひとつの方式については次回書きたいと思います。次回はプレシュートブローバックです。

2016年9月6日火曜日

固定ガスガンとその種類

はじめに


今日は固定ガスガンについて書くことにしましょう。
固定ガスガンも比較的歴史の長いエアソフトガンです。かつてMGCが発売したベレッタ M93Rは、「連射ができてよくあたるエアガン」として、相当に売れたようです。
固定ガスガンは銃のモデルによって構造が全く違うので、それぞれ分けて書きたいと思います。

1.固定ガスハンドガン


先に挙げたMGCM93Rをはじめとする、スライドの動かないオートマチックハンドガンや、リボルバーのガスガンがこれです。最近はオートマチックハンドガンは主にガスブローバックガンとして発売されることが多いので、最近はリボルバーが主流でしょうか。


固定ガスハンドガンのうち、オートマチックハンドガンは固定スライドガスガンとも呼ばれます。
トリガー操作で内部のバレル…インナーバレルが後退し、マガジン上部から出てくるBB弾をチャンバーにくわえこんだ後、ハンマーがマガジン内ガスタンクのバルブを叩くことでガスを放出、発射します。東京マルイのMk23 SOCOMピストルのように、バレルが後退するのではなく、ノズルが前進してBB弾を拾い上げ、チャンバーに装填するものもありますが、おおむね作動は同じです。

一方、リボルバー型はもともと発射に伴って大きく動くところがないので、単純に「ガスリボルバー」と呼ばれます。
こちらは元々BB弾がチャンバーに入っているも同然の状態なので、シリンダーをガスの放出口に合わせて回転させ、ハンマーでバルブを叩いてガスを放出、発射させるものがほとんどです。
マルシン工業のXカートリッジモデルのように、カートリッジにBB弾をセットして、カートリッジの後ろからガスを吹き付けることで発射する、ライブカート式もあります。全弾撃ち尽くした後、シリンダーをスイングアウトさせて、空薬莢を排出するまでの、リアルな動作が楽しめます。
また、タナカのペガサスシステムを搭載したリボルバーは、ガスタンク、BB弾、バルブが全てシリンダーに組み込まれているため、グリップからハンマーにかけてのメカニズムやサイズが非常にリアルで、実物のグリップがそのまま使えるようになっていたりします。

2.ガスボルトアクションライフル


ボルトアクションライフルはもともと手動式なので、ガスガンにした場合は固定ガスガンに分類されます。発射と同時に内部のウェイトをガスで後退させることで反動を発生させるメカが発表されたこともありましたが、結局いまだに発売されていません。


エアーコッキングガンと違って、シリンダーではなく実物そっくりのボルトを使用するので、非常にリアルな形状になります(もちろん実包を使用することはできないように工夫されています)。大抵の場合、ボルトとレシーバーが金属で作られているので、ボルトを引いた時に金属音がして、雰囲気を高めてくれます。

一方、残念ながら現在はパワーと精度に劣る製品が多いようです。これは、かつてパワー規制が無かったころに設計された製品(とそのデッドコピー)がほとんどなので、現在の「低いパワーのBB弾を高精度なチャンバーで正確に回転させて飛ばす」という思想に適合しないことが多いためです。ただ、サードパーティのパーツを利用して精度を上げることはできますし、何よりこのリアルな作動はその欠点を上回って余りあります。

モデルによってはやはりライブカート式のものも存在していて、ボルトを引くと小さな金属音とともに薬莢が排出されます。BB弾を入れなくても、モデルガンとして十分楽しむことができるのも、このタイプの魅力でしょう。

3.ガスショットガン


モデルは多くありませんが、ショットガンも存在します。固定ガスガンのガスショットガンは、ポンプアクション式またはレバーアクション式です。


ショットガンというだけあって、一度に数発のBB弾を発射できるモデルがほとんどです。サバゲーでも、広がりながらBB弾が飛んでいくのでかなりターゲットに当てやすく、うまく使えば電動ガンにも十分対抗できる性能を誇ります。もうじき発売される東京マルイの最新作「KSG」はこのタイプです。

また、やはり一部のモデルはライブカート式で、しかもその中にはショットシェルにBB弾とガスを入れて使用する、非常にリアルなモデルが存在します。歴史的経緯で、カートリッジにガスを入れて発射するタイプのエアソフトガンは発売が忌避されることが多いのですが、このモデルに限っては短期間ながら合法的に販売が継続されたので、現在も模倣した製品が販売されています(コピー商品になってしまうのですが…)。

まとめ


固定ガスガンは「リアルさを犠牲にして安価に連射可能にした固定スライドガスガン」「リアルな操作が可能なガスリボルバー、ガスボルトアクション、ガスショットガン」の2種類に分けることができます。前者はサバゲーの道具として使い込むのに向いており、後者はどちらかというとモデルガン的な楽しみ方に向いています。

なかなかどれかひとつを選ぶのは難しいですが、あえて今の時代にひとつ選ぶなら、ガスショットガンでしょうか。一度に複数発のBB弾がまとめてターゲットに直撃した時の大きな着弾音は、ほかのエアソフトガンにはない醍醐味です。サバゲーでもかなり強力ですし、3GUNマッチなどの競技にも使えるので、ひとつ持っているとかなり楽しめるでしょう。