2016年9月15日木曜日

バッテリーの種類と扱い方(リチウムポリマーバッテリー編)

つづきから


今回はより高性能なバッテリーである、リチウム系のバッテリーです。
ただし、ニッカド系のバッテリーよりも扱いが面倒なところがありますので、どちらかといえば上級者向けのバッテリーと言えるかもしれません。

3.リチウムポリマーバッテリー


現在はさまざまな電子機器にバッテリーが使われていますが、その中でも最も使われているものがこのリチウムポリマーバッテリーです。「リポ」とも呼ばれます。正極にリチウム系化合物、負極に炭素、電解液に有機溶媒を用いることが多いバッテリーです。

リチウムポリマーバッテリーは、電解液がポリマーによってゲル状になっているリチウムイオンバッテリーです。そのため、電解液が液体状のその他のバッテリーとは異なり、缶に入れる必要がないため、さまざまな形状に加工することができます。スマートフォンのバッテリーのように、薄く作ることもできます。

バッテリーの特徴としては、サイズに対して容量が大きく、一度に取り出せる電流も大きいという点が挙げられます。そのため、電動ガンに使うと、とてもニッカドバッテリーやニッケル水素バッテリーでは入らないような小さな空間にも収めることができる上、モーターの初動に必要な大電流も容易に供給することができます。結果として、射撃のロックタイムを短くすることができます。
また、自己放電がほとんどなく、充電された状態のまま放置しても、電圧は長い間残っています。メモリー効果もほとんどないので、継ぎ足し充電も自由に行うことができます。

しかし、リチウムポリマーバッテリーには大きなデメリット、というよりも危険性があります。電解液が有機溶媒であるため、きわめて引火性が高く、取り扱いを誤ってショートさせてしまうと、発火、爆発するおそれがあることです。このため、飛行機の貨物室での輸送は現在では禁止されています。

また、過放電や過充電にきわめて弱く、これらを行った場合、内部で水素ガスが発生して破裂したり、リチウムが析出してショート、炎上したりするおそれがあります。そのため、リチウムポリマーバッテリーの充電には、電圧センサーとマイコンを使用した高度な専用充電器が必要です。スマートフォンやノートパソコンはこれらの充電回路を内蔵しているので、単にコンセントを差すだけで充電できますが、電動ガンは生のバッテリーセルを使用するので、充電器側に回路が必要です。

リチウムポリマーバッテリーは1セルあたりの電圧が約3.7Vと高いため、電動ガンには2セル(定格7.4V)または3セル(定格11.1V)のものがよく使われます。先に述べたように、過放電と過充電に弱いため、ニッケル系バッテリーのように直列接続されたバッテリーに放電端子からそのまま充電することはできません。

ではどうするかというと、複数セルを直列して作られたリチウムポリマーバッテリーモジュールには、必ずバランス端子という、各セルに「並列に」接続された端子が存在します。この端子を使うと、各セルに個別にアクセスできるため、この端子から充電や放電をしながら、各セルの電圧が一定になるように充電を行うのです。これをバランス充電と呼びます。リチウムポリマーバッテリー対応の充電器は、このバランス充電に必ず対応しています。

リチウムポリマーバッテリーの扱い方ですが、まず何よりも、絶対に過充電は避けてください。対応した充電器を使って、2セルなら2セル用の、3セルなら3セル用のモードを使い、低めの電流で正しく充電します。絶対にニッケル系バッテリー用の充電器を使って充電してはいけません。火災の原因になります。
また、高い電流で急速充電することもできません。充電時に流せる電流は、容量と同じと考えてください。2000mAhのバッテリーなら2A、700mAhのバッテリーなら0.7Aです。ただし、最大電流で充電すると寿命が短くなる傾向があるので、少し低めにしておくといいでしょう。

過放電も厳禁です。1セルあたりの下限電圧はおよそ3Vなので、これを下回った状態にしてはいけません。電動ガンの動きが鈍くなってきたと感じたら、すぐに使用をやめてください。
リチウムポリマーバッテリーは出力が安定していて、容量が減ってきても電圧が高いままなので、電動ガンが普通に動いてしまいます。完全に動かなくなるまで使うと、もう下限電圧を下回っていることがあります。
電動ガンとバッテリーの間につないで使う電圧監視装置や、電動ガンが電子制御式の場合はバッテリーの電圧を監視する機能が付いていることがあるので、それらを活用するのもひとつの手でしょう。
もしも万が一下限電圧を下回ってしまった場合は、そのバッテリーは適切な方法で廃棄してください。使用を継続するのは危険です。

また、使用しない時は定格電圧よりも少し高い程度、例えば2セルの定格7.4Vバッテリーであれば、7.6V程度にしておくのがベストです。リチウムポリマーバッテリーは満充電状態で放置すると劣化し、ガスが発生して膨らんでしまうので、満充電での保管は避けてください。充電器によっては、保管用に適した電圧にしてくれるストレージ充電モードがあるので、それを活用すると簡単です。

最後に、これはどのバッテリーでも同じことですが、高温になる場所には放置しないでください。特に、真夏のフィールドの駐車場で、車の中にバッテリーを放置するときわめて危険です。

リチウムポリマーバッテリーは扱いが難しく、非常に癖のあるバッテリーですが、軽量で容易に高出力を得ることができるので、人気のあるバッテリーです。価格もかなり安価なので、ニッケル水素バッテリーの作動に不満が出てきたら、導入を検討してもよいでしょう。
ただし、リチウムポリマーバッテリーの取り扱い方法は必ず守ってください。充電しながら居眠りするようなことは、絶対にしないようにしてください。

つづきます


リチウムポリマーバッテリーは広く使われている割に、使い方を誤るとかなり危険なバッテリーなので、つい解説が長くなってしまいました。細かい使い方がわからなければ、コメントで質問していただいても構いませんので、どうか安全を心掛けて使うようにしてください。

次回はもうひとつのリチウム系バッテリーを紹介します。

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