はじめに
エアソフトライフルの中でも一二を争う人気を誇るモデルが、米軍が使用するM4A1カービンですが、ひとくちにM4と言ってもバリエーションが多岐にわたりすぎていて、どれを選んだらさっぱりわからない、ということはありがちです。
今回は、そのうちのひとつ、東京マルイの次世代電動ガン SOPMOD M4を紹介したいと思います。
1. M4カービン
米軍がベトナム戦争時に採用したM16ライフルは、50年以上に渡って改良を加えられながらいまだに使われ続けています。戦闘形態の変化に伴って、長大なフルサイズライフルよりも、取り回しの良いカービンがありがたがれるようになりましたが、米軍もそれにしたがい、M16ライフルの短縮バージョンである、M4カービンを採用しています。
M4カービン、あるいはM4A1カービンは、M16A4ライフルのバレル長を14.5inchとして、ストックを5ポジションの伸縮タイプにしたモデルです。バーストモデルがM4カービン、フルオートモデルがM4A1カービンですが、現在では主にM4A1カービンが使われています。
米軍が使っているだけあってエアガンでも特に人気があり、もちろん電動ガンでも何種類も発売されています。その中には、単純な射撃性能だけでなく、ギミックが盛り込まれたモデルもいくつか存在します。そのうちのひとつが、次世代電動ガン SOPMOD M4(次世代SOPMOD)(http://www.tokyo-marui.co.jp/products/electric/nextgeneration/201)です。
2. 次世代電動ガン SOPMOD M4
SOPMODとは"the Special Operations Peculiar MODification"の略で、特殊作戦用に回収が加えられた装備のことを意味します。具体的に特定のモデルを表すわけではないのですが、SOPMOD M4と言った場合、大抵はKnights ArmamentのRAS(Rail Adapter System)とLewis Machine & Tool CompanyのCraneストックを取り付けたものを指します。
次世代SOPMODもまさにそのような構成をしていて、アルミダイキャスト製のレシーバーにやはりアルミダイキャスト製のRASレプリカと、ABS製のCraneストックレプリカが取り付けられています。
スタンダード電動ガンのM4A1カービンとは異なり、レシーバーが金属製で比較的頑丈なのがポイントです。ただし、その分重量はありますので、サバゲ利用では不利かもしれません。
次世代電動ガンシリーズは、シュート&リコイルエンジンというギミックを搭載していて、ピストンの作動に連動して内部のウェイトを前後させて、疑似的な反動を再現する仕組みを持っています。実銃とは異なり前に向かうような反動ではありますが、それでもBB弾の発射と同時に銃が大きく振動するので、撃っていてとても楽しい銃です。
また、次世代SOPMODをはじめとする次世代M4シリーズには、マガジン内のBB弾を撃ち切ると自動的に作動が停止するオートストップシステムも搭載しています。再度撃つには、マガジンを交換してボルトキャッチを押す必要があります。ノーマルマガジン専用で多弾マガジンでは使えませんが、弾切れ時のリロードアクションが楽しめます。
この機構のため、スタンダード電動ガンのM4A1カービンとのマガジンの互換性はありません。
命中精度ですが、設計が新しいためか初速が比較的高いのと、チャンバーの性能がよいこともあって、東京マルイの電動ガンの中ではトップクラスの性能を誇ります。ただし、フルオート射撃時は振動で狙いがずれてしまうので、弾が散ってしまいます。これもロマンのひとつと思いましょう。
次世代SOPMODは、バッテリーとして専用のSOPMODバッテリーを使用します。これはニッケル水素バッテリーをコの字に組み立てたもので、ストック後部のバットプレートを外して差し込むだけの簡単取り付け仕様になっています。
扱いが非常に楽なのがメリットですが、ニッケル水素バッテリーであることと、構造上接点が多く、効率が悪いのが欠点です。通常の電動ガンは大抵1秒に約15発ほどのサイクルで発射しますが、次世代SOPMODは1秒に約13発ほどと、やや遅めのサイクルになっています。また、セミオートロックも発生しやすいのが難点です。
サードパーティからリチウムポリマーバッテリーを取り付けるためのアダプターも発売されているので、気になるようであればそちらを使用するのもよいでしょう。
次世代SOPMODは金属製のレシーバーを使っているので比較的頑丈な部類ですが、使い込むと振動でバッファーチューブがガタついてくるという持病を持ちます。現在のモデルは改良されてはいますが、それでも傷みやすいので、定期的にバッファーチューブとキャッスルナットが緩んでいないか、点検することをお勧めします。きちんと手入れをしてれば、取り返しがつかなくなるほど傷むことはなかなかありません。
次世代電動ガンシリーズは比較的価格が高めであることと、特許で守られているため海外製のコピー商品が存在できないこと(そんなことは当然だと思われるかもしれませんが、海外製のエアガンにはかなりの割合で日本製品のコピー商品が存在します)の2点から、海外製のカスタムパーツは比較的少なめです。
ただし、グリップ、ハンドガード等はスタンダード電動ガンのM4A1シリーズと完全な互換性があるので、外装パーツの交換で困るところといえばレシーバーとストックくらいでしょう。
ストックも交換したいのであれば、ノーマルのM4A1を再現した次世代電動ガン M4A1カービンも発売されているので、そちらを選ぶとよいでしょう。こちらはSOPMODバッテリーではなく、通常のバッテリーをハンドガード内に格納します。
次世代SOPMODは多少の欠点はありますが、性能が非常に高いので、おすすめできる電動ガンのひとつです。単純なBB弾の発射のみならず、射撃そのものの面白さも一緒に味わえる電動ガンとしては、随一のものだと思います。
はじめに
ここまで長々と基本的な事柄について書いてきましたが、今後は時々エアガンの機種についての紹介をしていこうと思います。私が使ったことのあるものばかりになってしまうのはご勘弁ください。
最初は東京マルイのハイキャパ 5.1についてです。
1. ハイキャパ 5.1
ハイキャパ 5.1(http://www.tokyo-marui.co.jp/products/gas/blowback/55)はいわゆる「ハイキャップ 1911」と呼ばれるもののひとつです。デザインの細かい部分は東京マルイオリジナルですが、実銃のSTI 2011をモデルにしています。
2004年発売とやや古いモデルですが、実射性能が高く、マッチ等でもよく使われます。というより、箱出しの状態で相当当たるので、東京マルイ製品によくある「カスタムすると性能が悪化する銃」のひとつです。
通常のガバメントモデルと違って、マガジンがダブルカラム仕様なので、グリップが太いのが難点ですが、その分マガジンが大きく、連射しても性能が落ちにくいというメリットがあります。
STI 2011はグリップとシャーシが分割式になっていますが、ハイキャパ5.1もその例に漏れず、アルミダイキャスト製のシャーシとABS製のグリップでフレームが構成されています。シャーシが金属でフロント部分が重いので、強いリコイルでありながらフロントの跳ね上がりを抑えられるので、命中精度を高くできます。
銃そのものの使い方は通常のガバメントモデルと同じです。シングルアクションのコック&ロック仕様で、グリップセフティも付いています。
とにかくカスタムパーツが豊富で、サードパーティのパーツだけで一丁組めてしまうほどパーツが揃っています。パーツ交換はやや面倒な方です。最初はマグウェルとか、マガジンキャッチのように、本体を分解しないで取り付けられるパーツから入れていくといいかもしれません。
欠点としては、スライドストップノッチが欠けやすいことと、ディスコネクターの作動不良があります。前者はマルイも問題としたのか、同型のスライドを使用するウォーリアシリーズでは亜鉛ダイキャスト製のブローバックハウジングからアームを延長させて、スライドではなくそこにスライドストップをかけるようにして、スライドストップノッチが欠けないようにしています。
後者はマルイのガバメントモデルの持病で、使い込むうちにディスコネクターが上がらなくなってしまい、トリガーを引いてもハンマーが落ちなくなってしまう現象です。ディスコネクターは亜鉛ダイキャストにクロームメッキしたパーツなので、表面がデコボコしており、引っかかってしまうのが原因なので、ディスコネクターの干渉しているところを少し磨いてあげると解決します。それでダメなら、シアースプリングが劣化しているのが原因なので、新品に交換することをお勧めします。一時的な回避策としては、シアースプリングのディスコネクターを押し上げる部分を少しまげて、テンションを上げるのも有効です。
2.バリエーション
ハイキャパ 5.1にはいくつかのバリエーションモデルがあります。
まずは、スライド長を5.1inchから4.3inchにしたハイキャパ 4.3です。シャーシとスライドが同じ長さで、前面がフラットになっているので、ハイキャパ
5.1とはまた違ったスパルタンな印象があります。
ハイキャパ 4.3にはフルオート専用のモデルがあります。これがハイキャパエクストリームで、夏場に使うと猛烈な作動をしてくれます。ブローバックハウジング、ハンマー、シアー、ディスコネクターが専用品になっています。
ハイキャパ 5.1は作動性がよいので、純正でマッチ仕様のカスタムガンがあります。最初に発売されたのがハイキャパマッチカスタムで、肉抜きされたスライドによって高速な作動ができましたが、いかんせん肉抜きしすぎたのか破損が多く、すぐに生産終了してしまいました。
現在発売されているものがハイキャパゴールドマッチで、マッチカスタムのパーツ形状を調整した上で、金属パーツを金色にメッキしてあります。シャーシの形状が特徴的で、フロントが斜めに延長されているので、通常のハイキャパとはまた違った味わいがあります。
また、ガスブローバックガンには珍しく、子供向けのローパワーモデル、ハイキャパ 5.1Rがあります。青少年育成条例で定められた0.135J以下というパワーをクリアした、14歳以上用のモデルです。本来このパワーならば10歳以上用になるところですが、スライドが激しく動くことから、14歳以上用としたようです。
パワーが低い以外は完全に通常のハイキャパ 5.1と同じで、インナーバレルアセンブリを除いてカスタムパーツの互換性もあります。
その他、ハイキャパのスライドは東京マルイのガバメントモデルと互換性があるため、組み替えが可能です。ウォーリアシリーズはハイキャパ 4.3のスライドをほぼそのまま使っています。
はじめに
スコープやドットサイト等を使って実際の戦闘をする場合と、サバゲーをする場合とで、ひとつ大きく違う点があります。当たり前のことですが、サバゲーでは当たっても死なない、という点です(きちんと目を保護して、法律を守った銃を使った上でのことですが)。
例えば、スコープを構えた状態で、スコープの対物レンズに弾が直撃したとしましょう。これが実弾だった場合、恐らく弾丸はそのまま頭に飛び込んで、撃たれた人は死んでしまうでしょう。
一方、エアガンの場合はそのような状況に陥っても命に影響はありません。しかし、BB弾とはいえ弾が対物レンズに直撃してしまうと、よくて傷、悪ければレンズが割れてしまいます。つまり、実銃の場合とは違って(実弾だったらどうせ死んでしまうので、スコープひとつ守ったところでなんの意味もありません)、サバゲーではスコープをどう保護するか、ということを考える必要があります。
1. ポリカーボネート板による保護
一番オーソドックスな方法がこれです。最低1mm、できれば2mmくらいのポリカーボネート板を対物レンズの前に配置して、BB弾の直撃からレンズを守ります。
ドットサイトの場合は、エアガンのカスタムパーツメーカーから専用部品が出ていることがあります。それをはめ込むだけなので、取り付けは非常に簡単です。
一方、スコープで専用部品が出ていることはまれなので、ポリカーボネート板を自分で切り出すか、あらかじめ対物レンズのサイズに合わせて丸く切り出された板を購入することになります。専用品ではないので固定方法を考える必要がありますが、一番簡単な方法は、フリップアップ式の対物レンズキャップを使用して、スコープとキャップの間に挟み込むことです。
ACOGのような特殊な形状で対物レンズキャップが使えない場合は、圧入するなどの面倒な手順を使わなければならないのが難点です。
2. キルフラッシュによる保護
モデルによっては、キルフラッシュという専用部品が存在することがあります。これは比較的頑丈なメッシュでできたカバーで、対物レンズに反射する光を抑え、標的に気づかれにくくするためのものです。
対物レンズをすっぽり覆うので、BB弾の直撃からレンズを守ることができます。ポリカーボネート板よりはやや弱いこと、対物レンズ前にメッシュを配置するので像が暗くなってしまうことが難点ですが、大抵は専用部品なので取り付けが簡単なのがメリットです。メーカーによっては、光学機器を買った時に標準で付属していることもあります。
ACOGには専用のキルフラッシュが存在するので、それを使うとよいでしょう。
まとめ
光学照準器の対物レンズは結構頑丈なので、半端な距離からの直撃ならあまり割れたりはしないのですが、それでも気分的にいいものではないので、保護することをおすすめします。
個人的なおすすめはポリカーボネート板です。特にスコープの場合は、フリップアップキャップにはめ込むだけで十分な強度を保ってくれますし、傷が入った場合は作り直せばいいのでコストも非常に安く済みます。
特殊な形状のスコープや、ドットサイトの場合は、専用部品を購入しなければなりませんが、せっかくの光学照準器を壊さないように、サバゲーに投入する際にはなるべく保護しておいた方がいいでしょう。
はじめに
パララックスの話をしてしまったので、ゼロインの話もしておきましょう。というより、本来はこちらが先でした。すみません。
1. ゼロインとは
いくらスコープがあるとはいえ、ただ覗いて撃つだけで狙ったところに飛んでいくほど甘くはありません。当然ながら、弾道とスコープのレティクルが一致するように調整する必要があります。これをゼロインと呼びます。
もちろん、ドットサイトやホロサイトの場合も同じです。
2. ゼロインの方法
ゼロインの方法について、順を追って説明しましょう。
(1) 銃を固定する
まず、銃をきちんと固定しましょう。立ったまま銃を構えて撃っても、撃つたびに動いてしまうため、正確なゼロインを行うことはできません。
欲を言えばライフルレストやサドルと三脚を使用してしっかり固定することがよいのですが、なければバイポッドや、それも無ければバックパック等に載せて、動かないようにしておきましょう。
できればこの時点で銃の水平が取れているとベストです。
(2) スコープを固定する
銃がしっかり固定されていても、その上に載っているスコープがグラグラでは元も子もありません。こちらもしっかりと銃に取り付けておきましょう。
実はここで問題になるのがスコープマウントの精度です。良いスコープを使っていても、スコープマウントが安物のレプリカでは、きちんと狙うことはできません。できれば実銃対応のスコープマウントを使うことをおすすめします。
(3) 標的までの距離を設定する
ゼロインはある特定の距離に対して行うものなので、狙って当てたい距離に標的を配置します。一斗缶や段ボール箱などでいいでしょう。
サバゲーの場合は40~50m、標的射撃の場合はその距離に合わせて配置してください。
なおこの時、銃と標的の高さが同じになるようにしてください。高さに差があると、銃を傾けて撃たなければならなくなるため、正確なゼロインはできなくなります。
(4) ホップを調整する
標的にきちんと届くようにホップを調整します。撃ちながらやってもかまいません。
(5) 左右を調整する
射撃を行い、弾がレティクルのどちら側に飛んで行ったかを確認します。
もし弾道がレティクルの中心より左側にあった場合、レティクルのウィンデージノブを"R"方向に回します。右側にあった場合は"L"です。「ウィンデージノブを回すと、弾道が動く」と覚えれば直観的です。
この段階では上下の調整はしていないので、左右だけを気にしてください。
なお、射撃を行う場合は、銃が完全に水平になっていることに注意してください。特に、左右の傾きは厳禁です。ホップの影響で、弾が斜めに飛んで行ってしまいます。
(6) 上下を調整する
今度は上下を調整します。弾道がレティクルの中心より上側にあった場合は、レティクルのエレベーションノブを"DOWN"側に、下側にあった場合は"UP"側に回します。
(7) 違う距離で撃ってみる
サバゲーの場合は異なる距離での射撃もありうるので、少し標的を近づけて撃ってみるといいでしょう。この時、あまりにも着弾点がずれるようなら、正常にゼロインができていないか、ホップ弾道が山なりになりすぎています。ゼロインがずれている場合はともかく、ホップ弾道に関しては慣れるしかありません。
まとめ
実のところ、狙ったところにそれなりに当てられれば、エアガンに関してはゼロインは適当でも大丈夫です。というのは、エアガンの精度はそれほど高くなく、「BB弾が0.005g軽かった」「チャンバーに少し油が付いていた」「銃が傾いていた」「たまたまちょっと風が吹いた」といった、ほんの些細な現象で、30m先の着弾点が大幅に変わってしまうためです。私もいつも適当です。
とはいえ、全く調整しないままではなんの意味もありませんし、やり方がわからないままでは調整のしようもないので、基本のやり方をご紹介しておきました。せっかくのスコープですし、きちんと調整して、バシバシ当てられるようにしてみてはどうでしょうか。
はじめに
「アイボックスの広いスコープは適当に覗いても標的が見える」という話をすでにしたかと思います。しかし、スコープは見えればいいというものではなく、レティクルで狙ったところに弾丸を送り込むことができなければ意味がありません。この時に重要になるのが、パララックス(視差)という概念です。
1. パララックスとは
スコープのレティクルは当然上下左右に調整ができるのですが、場合によっては覗き込む位置によって、レティクルの位置が変化してしまうことがあります。これをパララックスと呼びます。
例えば、30m先の標的にレティクルをきちんと合わせたとします。この状態でとっさに構えて、たまたま目がスコープをまっすぐ覗きこまずに、少しずれてしまった時、もしこのスコープがパララックスの影響を受けていると、レティクルに標的をぴたりと合わせたとしても、標的には当たりません。なぜなら、覗き込む位置がずれたことで、レティクルが指す場所がずれてしまっているからです。
これでは、いくらアイボックスの広いスコープを使っていても、狙ったところに当たらなくなってしまいます。
パララックスは標的までの距離に依存しています。100mでパララックスが無くなる(パララックスフリーと呼びます)ように設定されているスコープで、50m先の標的を狙うと、パララックスが発生します。この影響をなくすためには、パララックスを調整する必要があります。
2. パララックスの調整
スコープによっては、パララックスの調整ができるものとできないものがあります。パララックスの調整ができないスコープでは、あらかじめ設計された距離以外ではパララックスの影響をなくすことはできません。
一方、現在主流のスコープは大抵パララックスの調整が可能です。通常はフォーカスの調整と一体となっていて、レティクルと標的のピントがきちんと合っていれば、パララックスの影響を受けない状態であるといえます。
ただ、パララックスの調整範囲には上限があります。スマホのカメラで手元の小さいものを撮影する時、何度やってもオートフォーカスでピントが合わない、という現象を見たことがあるかと思いますが、それと同じで、ある程度近いとフォーカス調整機構ではピントを合わせきれなくなるのです。
これはエアガンにとっては大きな問題です。というのは、エアガンは実銃に比べてはるかに射程が短いので、パララックスの影響を受けない距離をより短くしなければならず、つまり通常よりも近距離の標的にピントを合わせなければいけない、ということになるからです。
この最低距離は、きちんとしたメーカーでは仕様として公開しています。完全に影響を取り切れないとしても、できるかぎりパララックスフリーの距離が短いものを選んだ方がよいでしょう。
はじめに
スコープはドットサイトに比べて価格差が激しく、1万円程度の安価なものから、100万円もする超高級なものまであります。一見して差はなさそうに感じますが、一体何が違うのでしょうか。
1. 明るさ
スコープは複数枚のレンズを使用して像を拡大します。つまり、外側から入った光は、必ず複数枚のレンズを通って、目に見えるわけです。
レンズの透過率が95%の場合、レンズ1枚を通すと、像は5%暗くなります。これだけならほとんどわかりませんが、もし8枚のレンズを使ったライフルスコープがあったとして、そのレンズの透過率が95%だと、最終的に目に見える像は95%の8乗なので、本来の66%まで明るさが低下してしまいます。
安価なスコープと高級なスコープの第一の違いはこの点です。高級品は非常に高い透過率のレンズを使用しているため、肉眼とほぼ変わらない明るさを持っています。そのため、薄曇りや雨天、夕方等、やや暗い状況でも、標的をはっきり見ることができます。
2. 解像度
解像度と言っても、液晶を使っているわけではないので、ドットの数が違うとかいうわけではありません。
レンズは工業製品なので、必ず製造公差というものが存在します。レンズの製造公差とは、すなわち歪みになります。レンズが歪んでいると、入ってきた像も歪んでしまうため、複数のレンズを通すうちに焦点にズレが生じてしまい、ぼやけた像になってしまいます。
また、組み立ての段階でレンズの中心が完璧に一致していなければ、どれだけよいレンズを使っていても、最終的な像はぼやけてしまいます。
これが第二の違いです。レンズそのものの精度と組み立ての精度が高いため、安価なものと高級品では、明らかに像の細かさが違います。これは高倍率時に特に顕著で、ある程度離れた距離に隠れたものを探す時に威力を発揮します。
まとめ
実のところ、スコープは「性能のよいものは高い」というのを地で行く製品です。軍における長距離狙撃や、ロングレンジ射撃競技に使われるスコープが、ことごとく数千ドル以上もする高級品なのは、これが理由です。
とはいえ、エアガンでは高々数十mの射程距離しかありませんし、わざわざ薄暗いところで射撃する必要もあまりないので、光学性能そのものが射撃精度にどこまで影響するかは、ほとんど微々たるものでしょう。むしろ、前回紹介したアイボックスのように、覗きやすさを重視して選択した方がよいかもしれません。
はじめに
スコープは複数のレンズを使った複雑な光学機器のため、素通しの筒を覗くのとは使い方が全く違います。このあたりはカタログスペックには載らない性能のわりに、使い勝手に大きく影響するので、購入する前にきちんと理解しておきましょう。
1. アイリリーフ
レンズの付いていないただの筒をまっすぐ覗いた時、中心には向こう側が見えますが、その周囲には筒の内壁が見えるはずです。
スコープを使った時、接眼レンズ一杯に向こう側の状況が見える状態ではなく、一部に内壁が映ってしまっている状態を、「ケラレている」と言います。これは、スコープだけではなく、一眼レフカメラ等にもある現象で、他機種用のレンズをアダプターで装着すると、組み合わせによっては起きる現象です。
ケラレている状態だと、せっかくのスコープの視野の一部が欠けてしまうことになり、非常に見づらい状態になります。
ケラレないようにするには、接眼レンズと目の間を、スコープによって決められた一定の距離にする必要があります。これをアイリリーフと呼びます。
アイリリーフは、その設定された長さによってストックの長さから構え方まで決まってしまうので、非常に重要です。
例えば、米軍が使用している固定倍率のプリズムスコープであるACOG TA31は、アイリリーフが非常に短いことで有名です。M16A4に載っている写真をよく見かけますが、M16A4は長めの固定ストックですし、そこにさらにボディーアーマーを着込んだ状態で普通に構えると、スコープと射手の頭の距離がアイリリーフよりも遠くなってしまうため、肩にストックを載せたような構え方をしていたりします。TA31はコンパクトでいいのですが、M16A4にはどうにも使いづらいように感じてしまいます。
アイリリーフは大抵の場合スコープの仕様としてカタログに載っているので、調べてみるといいでしょう。
2. アイボックス
個人的にはアイリリーフよりも重要であるように感じるのが、このアイボックスです。
アイリリーフは接眼レンズから目までの距離という1次元の値ですが、アイボックスはそれを3次元空間に広げた概念です。
アイリリーフが適正な距離であっても、頭の位置が少し上下左右にずれていると、やはりケラレてしまうことがあります。アイボックスの広いスコープは、このような状況でもケラレにくく、とっさに構えた時でも正しく標的を見ることができます。
このデータはカタログにはまず載っていないので、評判を調べるしかありません。
例えば、TrijiconのAccuPointシリーズは比較的アイボックスが広く、狙いやすいスコープと言えます。TrijiconはACOGのようにコンパクトで接近戦でも使うようなスコープを多く製造しているので、解像度や倍率の高さよりも狙いやすさを重視しているようです。
一方、ディオン光学技研のMarchシリーズはアイボックスが狭いとよく言われています。Marchシリーズはどちらかというと精密射撃や狙撃に使われるものなので、コンパクトかつ高倍率で、解像度も高いことを重視して、アイボックスの広さとトレードオフの設計にしているようです。実際、光学性能自体は価格帯が一回りか二回り上の製品に匹敵します。
エアガン用では、ノーベルアームズのスコープはかなりアイボックスが狭いため、とっさの射撃にはあまり向いていません。価格帯の割に光学性能はよいので、やはりトレードオフになってしまっているようです。
なお、倍率の高いスコープほどアイボックスが狭くなる傾向があります。高倍率のスコープの場合、じっくり狙って撃つことが多いので、アイボックスが狭くても特に大きな問題にはならないのだと思います。
アイボックスは精密射撃の時はそれほど気にしなくてもよいですが、サバゲーでアサルトライフルに載せる場合には重要視した方がいい要素です。
先に述べた通り、カタログには載っていないので、欲しいスコープがあれば店頭で見せてもらうなどして、使い心地を確かめた方がいいでしょう。