はじめに
グロックを紹介した時に、「マニュアルセフティが全くない実用性に割り切ったデザイン」と書きました。実はグロックピストルはマニュアルセフティが無くても、落下や衝撃を与えた時に暴発しない仕組みを備えるため、やや特殊なトリガーシステムを備えています。
グロックは特殊な例ですが、オートマチックピストルには、他にもいくつかのメジャーなトリガーシステムがあります。
1. シングルアクションオンリー
ハンマーをコックした状態からしか発砲できない方式です。とはいえ、オートマチックの場合は一発撃てば次は自動的にハンマーが起きた状態にすることができますし、初弾を装填した時にハンマーがコックされるので、その点は問題にはなりません。
この方式は、あらかじめハンマーがコックされているのでトリガーはシアを解除するだけでよく、トリガープルを非常に軽くできるのがメリットです。軽いトリガーの場合、トリガーを引いても狙いがずれにくいので、高精度の銃にすることができます。
一方、トリガーが軽いため、うっかり引っかけてトリガーを引いたりしないように、なんらかのセフティが必要です。
このタイプのトリガーシステムで最も有名なのが、M1911及びそのバリエーションモデルです。M1911の場合は、グリップセフティとサムセフティの2つのセフティを持っていて、サムセフティがかかっていればトリガーは動きませんし、仮にサムセフティを解除しても、グリップをしっかり握り込んでグリップセフティを解除しなければ撃てないようになっています。
一方、そのM1911を参考に徹底した省コスト化を図ったのがあのトカレフピストル、TT-33です。トカレフピストルはセフティも省略されているので、チャンバーに初弾を装填したままうっかり落としたりすると、暴発を起こすことがあります。当時は撃つ直前まで装填をしないルールだったのでこれでも問題なかったということです。
2. ダブルアクションオンリー
ハンマーは常にダウン状態で、トリガーを引くと連動してハンマーが起こされ、引き切ることでハンマーがレットオフされる方式です。手でハンマーを起こして、シングルアクションにすることはできません。
この方式はトリガープルが重く、狙いがぶれやすいという弱点があります。一方、トリガープルが重いおかげで、うっかりトリガーを引き切ってしまうことはまずありません。そのため、マニュアルセフティがなくても十分安全な銃にすることができます。
マニュアルセフティが不要と言うことは、余計なレバー類が外側に出ていないので、隠し持っていても引き抜くときに引っかかりにくいため、コンパクトなオートマチックピストルによく採用されています。
今回はオートマチックピストルの解説ですが、リボルバーもダブルアクションオンリーのものが結構あります。リボルバーは発射してもハンマーがコックされないので、マニュアルセフティが付いている銃は稀です。
エアガンにおいては、ガスブローバックガンには今のところこのタイプはありません。リボルバーを含む固定ガスガンでハンマー内装式の場合、ダブルアクションオンリーになっていることがあります。例えば、マルゼンのP99フィクスドスライドはダブルアクションオンリーですが、独特な構造でトリガープルがなめらかなので、快適に使うことが出来ます。
3. シングル・ダブルアクション
両方のモードを使用できる方式です。ハンマーダウンからトリガーを引けばダブルアクションですし、手でハンマーを起こしてシングルアクションにすることもできます。
このタイプのオートマチックピストルは多く、米軍が採用しているU.S. Pistol M9/M9A1やその元となったベレッタ Mod92FS、H&K USPやHK45、SIG P226及びそのバリエーションなど、多岐に渡ります。
これらのオートマチックピストルには、大抵の場合、コックされたハンマーを安全にダウンさせるためのデコッキング機能が付加されています。デコッキングをしておくと、トリガーがダブルアクション状態に戻るので、マニュアルセフティを解除しても安全に持ち運ぶことができ、トリガーを引けばそのまま発砲できます。
ただ、Cz75のようにデコッキング機能のないシングル・ダブルアクションオートマチックもあります。このようなモデルでダブルアクションを使うには、手でハンマーをしっかり押さえながらトリガーを引き、そっとダウンさせる必要があります。この操作をマニュアルデコッキングと呼びますが、正直なところ危険な操作なので、あまり推奨されてはいないようです。
ちなみに、マニュアルデコッキングをガスブローバックガンで行うと、方式によっては暴発しますので、やらないようにしてください。
つづきます
コンベンショナルな方式は上記3種類ですが、この他に特殊な方式がいくつかあります。特殊とはいえその中には現代では主流となっている方式がありますので、次回解説したいと思います。
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